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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.2.6

2013年2月6日 担当:鮎川

Light drinking in pregnancy and mid-childhood mental health and learning outcomes
~ 妊娠時の軽度飲酒と小児期中期の精神衛生と学習の結果 ~
出典: Arch Dis Child 2013 98: 107-111
著者: Kapil Sayal, Elizabeth S Draper, Robert Fraser, Margaret Barrow, George Davey Smith, and Ron Gray .
<論文の要約>
背景:
妊娠中の高度のアルコール摂取が、子どもの精神衛生と学習障害の危険因子であることのコンセンサスは得られている。しかし、妊娠初期の軽度飲酒が、児の精神衛生もしくは学習障害の危険因子となるかどうかは、いくつかの相矛盾した報告があり明確になってはいない。そのため、妊娠中の飲酒について、女性や健康の専門家への明確な助言提供が困難となっている。本研究の目的は、妊娠初期の経度飲酒が、子どもが11歳になった時点での、精神衛生や学業成績にどのように影響しているかを検討することにある。

方法:
イギリスのエイボンの人口をベースにした親と子どもの縦断研究(ALSPA)データによる。私たちは妊娠時の前向きデータを使用した。妊娠初期の飲酒は妊娠18週時にアンケートにて評価した。子供の精神衛生は親と先生が評価するStrengths and Difficulties Questionnaires(以下SDQs)を、学業成績はKey Stage2試験結果をアウトカムにした。そして、妊娠初期でのアルコール消費と子どもの精神衛生や学業成績との関連性を分析した。

結果:
39%の女性が1週間にグラス1杯未満、16%が1杯以上のアルコールを飲んでいた(45%がアルコールを控えていた)。調整後、飲酒を控えていた群と比較して軽度の飲酒は先生に評価されたSDQs値もしくはKS2値への影響はみられなかった。女子では、飲酒を控えていた群に比べて軽度の飲酒群で親が評価したSDQs値が少し悪くなる結果が示唆された。しかし、用量反応関係は明白ではなかった。

結論:
軽度飲酒に曝露された親の女子学童での親評価を含む調査結果のパターンは先行研究と一致している。また、軽度飲酒の副作用が総じてないことについても一致している。妊娠初期での軽度飲酒は11歳での精神衛生や学業成績の結果について臨床的に重要な有害事象との関連はみられなかった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■11歳になるまでの成長過程における環境要因等の影響がありすぎて、なかなか明確な結果を出せないのではないか?一方で、精神衛生を評価するには、ある程度の年齢にならないと評価ができない難しさが考えられる。

■なぜ、SDQsの評価を親と先生がしていたかが記載されていない。きちんと理由を明確にすべきだろう。研究の実現性の問題だろうか。

■軽度飲酒による影響が、親の評価したSDQ2と先生の評価したSDQ2で影響が反転している結果となっている。その点についても考察が欲しい。



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