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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.5.22

2013年5月22日 担当:手塚

Are Women Who Smoke at Higher Risk for Lung Cancer Than Men Who Smoke?
~ 喫煙女性は、喫煙男性よりも肺がんになるリスクが高いか? ~
出典: American Journal of Epidemiology February 20,2013.
著者: Sara De Matteis, Dario Consonni, Angela C. Pesatori, Andrew W. Bergen, Pier Alberto Bertazzi
<論文の要約>
背景:
ガン死亡者は年間140万人であり、肺ガンに関しては全体の18%を占めている。また世界的に見ても癌死亡率の主要原因とされ、罹患率は男性で減少する一方で、女性では増加傾向にある。
そこで今回、いくつかの異なる曝露-反応モデルによって、潜在的な交絡因子および、作用修飾因子を考慮したうえで、肺ガン発症における性差と喫煙の相互関係を評価すること、さらに大規模なデータセットを用いることで、肺ガンの組織型別の解析を行うことを目的とした。

方法:
2002年4月~2005年6月にイタリア、ロンバルディア地方で行われた、地域ベースの大規模症例対照研究である「肺ガンの病因に関する環境と遺伝に関する研究」のデータを用いた。対象者は、地域の13病院で病理学的検査により原発性肺ガンと診断された症例群2100人(男性1652人、女性448人)と、同じ地域に居住する住民から無作為に抽出され、居住地域、年齢、性別によりマッチされた対照群2120人(男性1620人、女性500人)である。過去の詳細な喫煙状況について、個別面接により情報を得た。肺ガンに関する喫煙状況(Pack-yearで評価)の影響を、多重ロジスティックモデルにより年齢、居住地、禁煙からの期間を調整し得られたオッズ比と95%信頼区間で評価し、男女を同時に投入したモデルにおける男女のオッズ比の傾きを比較することで、性と喫煙の交互作用について検討した。

結果:
対象者全体では、Pack-yearで評価された喫煙量の傾きは男性で女性よりも急であったが(女性と喫煙の交互作用項のオッズ比0.39(95%信頼区間0.24-0.62)、p‹0.0001)、喫煙歴のある対象者に限った場合では、傾きの違いはかなり小さくなった(オッズ比0.63(95%信頼区間0.29-1.37)、p=0.24)。肺ガンの組織型別に見た解析でも同様の結果が得られ、喫煙方法や吸入の程度、ニコチン依存度などの他の交絡因子で調整しても、結果は変わらなかった。

結論:
今回の知見は、女性が男性よりも喫煙に関連した肺ガンにかかりやすいということを支持しなかった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■この論文からは、「男性の方が肺ガン発症における喫煙の影響が大きいように見え、過去の知見と異なると思われる」と解釈できるが、これらは「男女で症例群における喫煙率が大きく異なり、潜在的な背景因子が異なることから男性で影響が過大評価されていることと、そして、喫煙とあまり関連していないといわれている腺癌が女性で多いことから、女性の喫煙の影響が過小評価されていること」が理由ではないか。

■症例群と対照群を1:1でマッチングさせたと思われるが、なぜか人数が一致していない。マッチングの方法についてもう少し詳しく記載しないと、バイアスの有無などについて、読者が検討することができない。

■山梨県でもがん登録が行われており、肺ガンについては数年分のデータを用いることで今回の対象者数を確保することができる。対照群としては、一般集団からランダムサンプリングすることは難しいので、健診データや人間ドックのデータを用いるのはどうだろうか。



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