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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.5.29

2013年5月29日 担当:秋山

The Influence of Family Income Trajectories From Birth to Adulthood on Adult Oral Health: Findings From the 1982 Pelotas Birth Cohort
~ 出生時から成人期の家族の収入軌跡による成人期の歯の影響:1982年のペロタス出生コホート研究からの知見 ~
出典: AMERICAN JOURNAL OF PUBLIC HEALTH 2011 Apr;101(4):730-736
著者: Marco A. Peres, PhD, Karen G. Peres, PhD, W. Murray Thomson, PhD, Jonathan M. Broadbent, PhD, Denise P. Gigante, PhD,
<論文の要約>
目的:
社会経済的地位(収入や学歴など)が成人期の健康に影響を与える3つの仮説として、臨界期の貧困、貧困の蓄積、社会的変動がある。この3つの仮説の証明を行うため、本研究ではブラジルの出生コホート研究において、貧困の仮説が成人における歯の不健康を予測したかを評価する。

方法:
参加者は1962年の出生コホートで5914名だった。その後の1997年・2006年の口腔健康調査では、1997年に888名(対象者平均15歳)、2006年では720名(対象者平均24歳)が参加者だった。出生、15歳、24歳時の3点において家族の月収の情報と貧困のエピソードをカウントした。その後、収入と貧困のエピソード数についてそれぞれトラジェクトリ解析を行った。トラジェクトリのグループ間比較は、性、出生体重、人種、母親・24歳時の対象者の教育水準、低出生(‹2500g, ≧2500g)、24歳での喫煙、15歳・24歳での前年の歯科の利用、24歳時での直近の歯科訪問の理由、24歳の歯石と歯の割合、グループ間の健康な歯の数の平均と中央値、中央値以下の者の割合についてであり、カイ二乗(もしくは傾向性)検定を行った。p値は0.05未満をもって有意とした。24歳の歯の不健康については、グループ間の不健康な歯数の分布の中央値で分割することにより二値変数に変換した。その後、中央値より大きかった者について、多変量ポアソン回帰分析を行いその有病率について回帰し、95%信頼区間を得て、3つの仮説についての検討を行った。

結果:
臨界期仮説の検討では出生時に貧困を経験した者は貧困を経験しなかった者と比較して、全ての調節因子(性別、歯科訪問、人種、歯石)で調節した後も有病率は30%高かった。社会的変動説の検討では貧困を経験していない参加者に比べ常に貧しい参加者は、調整後も60%高く、出生後の社会的レベルの向上をした者は調節後30%、下降をした人は40%高くなった。貧困が続くことについての検討では貧困のエピソードの数が増えるほど有病率は高かった。

結論:
出生時および人生の過程での貧困は、24歳での不健康な歯数と相関していた。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■24歳時での歯の不健康についての情報が提示されているが、子供の頃の歯科学的な情報がない。この情報がないことにより、う歯のリスクの人生を通じた変化を追うことができない研究となっている。

■1076人から900人を無作為に選択する理由はあるのだろうか。理由として、予算の問題があったのではないか。

■貧困のエピソードの数については主観的な指標を用いており、それは先行研究の指標を引用したものでもない。研究を行う上では、客観的な指標に基づいて調査を行うのが望ましい。



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