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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.6.12

2013年6月12日 担当:鮎川

Cardiovascular disease risk scores in identifying future frailty:the Whitehall II prospective cohort study
~ 心臓血管病リスクスコアによる将来的な虚弱の判別:ホワイトホールⅡの前向きコホート研究 ~
出典: Heart 2013;99:737-742
著者: Kim Bouillon, G David Batty, Mark Hamer, Severine Sabia, Martin J Shipley,Annie Britton, Archana Singh-Manoux, Mika Kivimäki
<論文の要約>
背景:
虚弱は臨床的に老人病症候群として認知され、機能低下に特徴づけられる。そして、運動や薬の選択等が虚弱に対して有効であるとする報告もあるため、虚弱症状発展のリスクを個別に判断することが重要であるとされている。先行研究でCVDと虚弱間の横断的関係をみたものや、CVDの危険因子が認知症、老年うつ病、機能障害を含む幅広い老年健康結果を予測する評価となることを示唆している調査が増えてきている。そこで今回は、ホワイトホールⅡの大規模前向きコホートデータを使用して、臨床診療ですでに習慣的に管理されているCVD危険アルゴリズムが、将来の虚弱を予測できるかどうかを検討することを目的とした。

方法:
ホワイトホールⅡ研究のデータを用いた。ホワイトホールⅡは主として質問質紙郵送法にて行われ、現在も継続中の英国公務員を対象にした大規模前向きコホートである。そのフェーズ5(1997-1999)をベースライン、フェーズ9(2007-2009)をフォローアップとして調査を行った。今回はその中で、ベースライン時にCVD疾患でなく、フォローアップまで追跡が可能であった3895人(男性73%、年齢45-69歳)を解析対象とした。CVD危険アルゴリズムは、Framingham CVD、Framingham CHD、Framingham stroke、SCOREの4種を用い、それぞれ虚弱との関係を検討した。CVDリスクスコアで要求される血液検査、血圧測定、喫煙状態等々はフェーズ5、9で行われた臨床検査時のデータを採用し、虚弱はフォローアップ終了時にフリードの弱さスケールを使って測定した。参加者は、弱さのスケール構成要素の5つの内、3つ以上で虚弱と分類された。そして、1-2の人は、前虚弱とし、一つも該当しないと無虚弱とした。ベースライン時CVD危険因子とフォローアップ時の虚弱との関係をみるため、虚弱分類を2値(虚弱と予後虚弱.・無虚弱)としてロジスティック回帰分析を行った。虚弱のオッズ比は、フォローアップ時のCVD危険因子の項目スコアが1SD増加する毎に推定された。その他に、CVD危険アルゴリズムと心臓血管イベントが起こる関係と、虚弱が起こる関係の強さを調べた。

結果:
最終フォローアップ時で2.8%の108人が虚弱と位置付けられた。ベースライン時CVD危険因子の内、年齢と高血圧治療薬治療の2つのみが、予後の虚弱と独立して関係していた。また、4つ全てのCVDリスクアルゴリズムは虚弱進行の将来的なリスクに関係した。オッズ比は各CVDリスクスコアが1SD増える毎にFramingham strokeスコアで1.35(95%信頼区間1.21-1.51)、Framingham CVDスコアで1.42(1.23-1.63)増加した。これらの結果は、CVDが起きたケースを除いても、この関係性は変わらなかった。CVDアルゴリズムと心臓血管イベント発症との関係でも1.36(1.15-1.61)~1.64(1.5-1.8)で推移し有意な関係性を示した。また、それぞれのリスクアルゴリズムは、虚弱より心臓血管イベント発症との関係が強かった。

結論:
臨床診療でCVDリスクスコアを使うことは、虚弱の予測に有用かもしれない。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■虚弱を防ぐためということはわかるが、何故虚弱になると問題かとういう点に触れられていない。これは、虚弱の具体的な状況が想像しにくいからであり、たとえば、日本国内で言うならば、要介護度が上がると言うことであれば、研究の目的が理解できると思われた。



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