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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.9.25

2013年9月25日 担当:手塚

Association of visit-to-visit variability in blood pressure with cognitive function in old age: prospective cohort study
~ 老後の認知機能と受診ごとの血圧変動の関連性について ~
出典: BMJ 2013;347:f4600 doi: 10.1136/bmj.f4600 (Published 30 July 2013)
著者: Behnam Sabayan Liselotte W Wijsman , Jessica C Foster-Dingley , David J Stott . Ian Ford .Brendan M Buckley. Naveed Sattar. J Wouter Jukema. Matthias J P van Osch .Jeroen van der Grond senior neuroradiology, Mark A van Buchem Rudi G J Westendorp . Anton J M de Craen
<論文の要約>
目的:
高齢者(70歳以上)における受診ごとの血圧の変動と認知機能の関連性を検討する事

デザイン:
前向きコホート研究

セッティング:
PROSPER研究というアイルランド・スコットランド・オランダの3か国における共同研究

対象者:
平均年齢75.3歳で心血管疾患のリスクを持つ5461名の高齢者。血圧は3か月ごとに平均で3.2年間測定された。受診ごとの血圧変動は、受診間の血圧測定の標準偏差と定義された。

主なアウトカム:
認知機能の4つの指標(注意テスト、解答速度、短期記憶、長期記憶)。553人の対象者に実施したMRIによる副次的な研究においては、構造的脳容量、脳の微小出血、梗塞、白質の高信号を測定した。

結果:
収縮期血圧の変動が大きい参加者において、すべての認知機能低下がみられた(注意機能3.08秒、解答速度1.16桁、短期記憶0.27個、長期記憶0.30個)。さらに、収縮期・拡張期血圧の変動が共に大きい参加者においては、海馬容積の小ささと皮質の梗塞と関連していた。拡張期血圧の変動が大きい参加者に関しては、脳の微小出血と関連していた。全ての関連は、平均血圧と心血管リスク因子について調整されたものである。

結論:
受診時における平均血圧と独立した血圧変動の大きさは高齢者において認知機能障害と関連があった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■認知機能評価について、本来ならば初回の評価に用いたMMSEを、フォローアップ後の評価にも用いるべき、あるいはフォローアップ後の評価尺度でベースラインの評価も行うべきであったと思われる。しかし、ベースラインは認知機能が保たれている人のスクリーニングとしての評価であり、フォローアップ後は、アウトカムとして認知機能を詳細に調査したものと考えられ、実行可能性から、このような研究デザインになったと思われた。

■それぞれのアウトカムについて、実際には血圧変動を連続変数として検定を行い、表のP値もその結果を記載してある一方で、血圧変動を三分位とした場合の結果が表に記載されており、ややわかりづらい。本来であれば、重回帰分析などの解を表に記載すべきではなかったか。また、図も、表をそのまま図にしたものであり、不要なものと思われた。

■この研究の最も評価された点としては、MRIによる画像分析を実施し、血圧の変動が脳の器質的な変化を生じさせ、結果的に認知機能障害を引き起こすというメカニズムの存在を示唆したことが挙げられる。



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