PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.10.16

2013年10月16日 担当:島田

Parental Prenatal Smoking and Risk of Childhood Acute Lymphoblastic Leukemia
~ 出生前の両親による喫煙と小児急性リンパ性芽球性白血病の発症との関連 ~
出典: American Journal Epidemiology,December 5,2011
著者: Elizabeth Milne*,Kathryn R. Greenop, Rodney J. Scott, Helen D. Bailey,John Attia, Luciano Dalla-Pozza, Nicholas H. de Klerk and Bruce K. Armstrong
<論文の要約>
目的:
出生前の特定の時期における両親の喫煙と小児急性リンパ性白血病(ALL)の発症要因との関連を検討すること

研究デザインとセッティング:
・2003年から2007年にかけて行われた小児ALL に関するオーストラリア人の母集団に基づく症例対照研究
・PubMed/ Medlineデータベースを用いた、1950年以降に英語で出版された文献による、父親の喫煙と小児ALLとの関連についてのメタアナリシス


対象者:
・ケース群は、上記調査に参加した小児ALLを治療している15歳以下の子どもの両親で母親が388人、父親は328人
・コントロール群は、電話番号のランダム抽出法を用いて募集した両親で母親が868人、父親は750人


統計解析:
ケース群とコントロール群の両親から、アンケートにより過去の15歳から出生前までの喫煙状況について、時期、1日の喫煙量についての情報を収集し、多重ロジスティック回帰分析により、ALL発症に関する、喫煙の時期と量の影響をオッズ比と95%信頼区間で評価した。

結果:
母親の喫煙は小児ALLとの有意な関連を認めなかったが、受精の時期に父親が1日当たり15本より以上の喫煙をしている場合の、ALL発症についてのオッズ比は1.35(95%信頼区間:0.98、1.86)であった。小児ALLと両親の喫煙との関連は、免疫表現型または細胞遺伝学的のサブタイプごとの解析でも、大きな差を認めなかった。上記の結果を含むメタアナリシスでは、受精前後に喫煙した父親のオッズ比1.15(95%信頼区間:1.06、1.24)であり、1日当たり20本以上の喫煙ではオッズ比1.44(95%信頼区間:1.24、1.68)であった。

結論:
受精前後の過度な父親の喫煙は小児ALL危険因子を高めることを示唆している。男性は、特に挙児希望がある時は、非喫煙を強く奨励されるべきである。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■この研究で症例対照研究のデザインが選ばれたのは、小児ALLの年間発症頻度が少なく、コホート研究により喫煙との関連と因果関係を検証するのは難しいからである。また、それでも症例数が少ないことから、研究デザイン上の限界を最小化するために、メタアナライシスを行ったと考えられた。

■喫煙時期と小児ALLの発症との関連は、1年ごとの喫煙状況を調べることで、喫煙の時期を詳細に分類し、受精前後、妊娠中といった特定の時期における喫煙の影響を特定できたことがこの研究のStrengthであると思われた。

■その上、喫煙がALL発症におよぼす生物学的メカニズムについても、精子と卵子の特徴などをふまえて推定しており、過去の文献との整合性からも優れた考察だと考えられる。



前のページに戻る