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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.10.30

2013年10月30日 担当:藤井

Association Between Maternal Use of Folic Acid Supplements and Risk of Autism Spectrum Disorders in Children
~ 小児の自閉症スペクトラム障害のリスクと母親の葉酸サプリメント使用の関連 ~
出典: The Journal of the American Medical Association,2013;309(6):570-577
著者: Pål Surén, MD, MPH; Christine Roth, MSc; Michaeline Bresnahan, PhD; Margaretha Haugen, PhD; Mady Hornig, MD; Deborah Hirtz, MD; Kari Kveim Lie, MD; W. Ian Lipkin, MD; Per Magnus, MD, PhD; Ted Reichborn-Kjennerud, MD, PhD; Synnve Schjølberg, MSc; George Davey Smith, MD, DSc; Anne-Siri Ø?yen, PhD; Ezra Susser, MD, DrPH; Camilla Stoltenberg, MD, PhD
<論文の要約>
重要性:
出生前の葉酸サプリメントは、子どもたちの神経管欠損のリスクを減らすが、他の神経発達障害を防ぐかどうかはわからない。

目的:
出生前に葉酸サプリメントを使用した母親とその後の児の自閉症スペクトラム障害 :ASDs(自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害[PDD-NOS])のリスクの関連を調査することである。


設計、設定、および患者:
この研究の85 176人の子どもたちの調査サンプルは、ノルウェー母子コホート研究(モバ)から得られた、集団ベースの前向き研究である。2002年から2008年に生まれた子どもたちを 2012年3月31日までフォローアップし、年齢の範囲は3.3歳から10.2歳で(平均6.4歳)あった。主な利害の曝露は、妊娠する前の4週から妊娠後8週に葉酸を利用したかどうかであり、妊娠前の最後の月経の最初の日を受胎と定義した。ASDsの相対危険度は、ロジスティック回帰分析で95%信頼区間とオッズ比によって推定した。分析は、母親の教育レベル、出産年、出産児数により調整した。

メインアウトカムの測定:
専門家が診断したASDs

結果:
フォローアップ後、研究サンプルにおいて270人の子どもがASDsと診断された。すなわち、自閉症114人、アスペルガー症候群が56人、特定不能の広汎性発達障害PDD -NOS100人である。母親が葉酸を取っていた子どもではASDsが0.10%( 64/61042 )を有していたのに比べ、葉酸未摂取では0.21パーセント( 50/24134 )であった。葉酸を使っていた子どものASDsを調整後、ORは、0.61 (95%CI 、0.41-0.90 ) であった。アスペルガー症候群や特定不能の広汎性発達障害PDD -NOSでは関連は見られず、検出力の限界であった。葉酸を使用している母親の特徴は魚油を使用している母親と同様な特徴であるが、出生前の魚油サプリメントの同じ様な分析では、ASDsとの関連は見いだせなかった。

結論と関連性:
妊娠時における胎児期の葉酸サプリメント使用は、モバコホートにおいてはASDsのリスクの低下と関連していた。これらの知見は、因果関係を証明することはできなかったが、妊娠時の葉酸サプリメントについて支持している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■葉酸の曝露とASDsのリスクを明らかにするために、妊娠期間が32週未満で出生した子ども、体重2500グラム未満の出生児、多胎出産の子どもを除外して解析しているが、ASDsとの関連において除外した理由を説明する必要がある。

■葉酸が神経管閉鎖障害を予防することは知られているが、この調査対象における神経管閉鎖障害の発症率について、引用文献でもよいからあるべきである。

■研究の強みとして、ASDsの診断の妥当性が高いことがあげられる。



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