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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2013.11.6

2013年11月6日 担当:陳

Maternal Oral Health Predicts Their Children's Caries Experience in Adulthood
~ 母親の口腔衛生状況は成年後子どものむし歯経験を予測 ~
出典: J Dent Resº 90(5):672-677º 2011
著者: D.M. Shearer W.M. Thomson J.M. Broadbent R. Poulton
<論文の要約>
目的:
母親の不十分な口腔衛生の長期的影響に関する知見は乏しい。そこで、幼児期における子どもの母親の口腔衛生状況が、後の子どの成年期における齲歯経験のリスク指標となるかどうかを検討する。

対象と方法:
使用した変数は、ダニーデン研究における5歳から32歳までの歯科検診およびインタビューデータであり、また5歳時に評価した母親の口腔衛生状況である。主要アウトカムは、被験者32歳時における齲歯の状態である。分析において、対象は5歳時に母親がインタビューされ、かつ5歳と32歳の双方で歯科検査を受けた835名(コホート全体の82.3%)である。

結果と考察:
母親の口腔衛生状況の自己評価カテゴリー毎に、32歳時の齲歯経験は一貫した勾配(グラディーション)を示した:劣悪な口腔衛生状況と評価した母親、または抜け歯のある母親の子どもたちは齲歯経験が最も高く、一方、優れた口腔衛生状況と評価した母親の子どもたちの齲歯経験は最低となった。この前向きコホート研究は、子どもの幼児期の母親の口腔衛生状況が成人後の子どもの口腔衛生状況に影響を与えるという仮説を支持した。母親の不良な口腔衛生状況があった子どもは、三十年後、不良な口腔衛生状況であった。母親の不良な口腔衛生状況は、子孫の成人後の口腔衛生状況のリスク指標として認められた。

結論:
幼児期の母親の不良な口腔衛生状況の自己評価は、子どもの成人後の不十分な口腔衛生状況のリスク指標として認めるべきである。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■本研究は先行研究の齲歯のトラジェクトリーによる分類の結果を使用していたが、齲歯トラジェクトリーのカテゴリー分類方法の説明が不足していた。先行研究では、データの特徴により、Group-based トラジェクトリー解析で、齲歯経験を高程度、中程度、低程度三つのグループに分けていた。この高程度トラジェクトリーグループを今回の解析アウトカムの一つとしていた。

■社会経済状況(SES)について、本研究は、職業による六分類を適用する標準NZ指標によって決定したが、職業以外の学歴、年収などを調査していない。

■本解析において、中・高程度の不良な歯垢トラジェクトリーグループは、高齲歯トラジェクトリーグループのリスクファクターと認めた。しかし、逆に高齲歯トラジェクトリーは歯垢トラジェクトリーのリスクファクターの可能性もあり、因果関係を考慮する必要がある。



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