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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.1.15

2014年1月15日 担当:藤井

Maternal dietary patterns in pregnancy and fetal growth in Japan:the Osaka Maternal and Child Health Study
~ 日本における妊娠中の母親の食事パターンと胎児の成長:大阪母子保健研究 ~
出典: British Journal of Nutrition (2012), 107, 1526-1533
著者: Hitomi Okubo, Yoshihiro Miyake, Satoshi Sasaki1,, Keiko Tanaka, Kentaro Murakami,Yoshio Hirota and Osaka Maternal and Child Health Study Group
<論文の要約>
目的:
妊娠中の母親の食事パターンとSGA児出産のリスクについて検討すること

デザイン:
前向きコホート研究

セッティング:
日本の大阪府寝屋川市(2001年11月~2003年3月募集)及び近隣地域(2001年12月~2003年11月募集)

対象者:
813人(生産、単胎、妊娠期間37-41週)の母親

方法:
妊娠中の母親の食事については、承認された自記式食事歴質問票を用いて評価し、第2調査として出産後に母子健康手帳に記載されている新生児の体重、身長、頭囲を母親が記載。クラスター分析により3食事パターンに分類した母親のSGA児の出産リスクをロジスティック回帰分析で検討した。

結果:
「米、魚や野菜」の摂取量が多いパターンの女性は、非喫煙でサプリメントを使用する割合と教育レベルが高く、妊娠中の体重増加量が少なかったのに対し、「小麦製品」の摂取量が多いパターンの女性では、出生体重( P=0.013)が低かった。「米、魚や野菜」の摂取量が多いパターンの女性と比較して、「小麦製品」の摂取量が多いパターンの女性は、潜在的な交絡因子の調整後、SGA児の出産が有意に高かった(多変量OR 5 .24 、95%CI 1.13- 24.4 )。

結論:
妊娠中のパン、菓子、ソフトドリンクの高摂取と魚や野菜の低摂取の食事パターンは、出生体重が軽く、SGA児を持つリスクが増加することの関連がみられたが、サンプルサイズが小さいことから、本研究で観察された関連は、偶然の可能性を排除することはできない。したがって、更なる大規模、前向き研究が、母親の食事パターンと胎児の成長の関係を確認するために必要である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■母親の食事パターンとSGA児の出生リスクとの関連について、アジア系民族において初めての報告である点が評価できる。

■本報告のSGAの基準は、日本人における妊娠期間と性別の基準成長曲線の10パーセンタイル以下と定義している。この基準に対し、寝屋川市とその近隣の妊婦のSGA児の割合は低い傾向がうかがえることから、本対象者の栄養状態は比較的良好な者が多かったと推測できる。したがって、日本の実態を反映しているとはいえないかもしれない。

■日本人における3つの食事パターンとSGA児のリスクの関連は納得のいく結果であったが、食文化の違いから西欧諸国の食事パターンとは異なることから、諸外国と単純に比較することは難しい。



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