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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.1.29

2014年1月29日 担当:田村

Rotating Night-ShiftWork and Lung Cancer Risk Among Female Nurses in the United States
~ アメリカの女性看護師における夜間交代勤務と肺がんリスク ~
出典: Am J Epidemiol. 2013;178(9):1434-1441
著者: Eva S. Schernhammer, Diane Feskanich, Geyu Liang, Jiali Han
<論文の要約>
背景:
夜間交代勤務は夜間の照明に暴露され、サーカディアンリズムに影響を及ぼす。夜間の照明はメラトニンの分泌を抑制し、また睡眠障害を引き起こすことから、がんの発症との関係が示唆され、夜間交代勤務とさまざまな悪性腫瘍の関連が示されている。一方、夜間交代勤務者が多い看護職においては、喫煙の影響を調整した後でも、看護職そのものが肺がん発症に関係していることが示唆されている。しかし、夜間の交代勤務とがんの発症との関連において、詳細な喫煙状況を考慮した検討はなされていない。そこで本研究では女性看護師において夜間の交代勤務が肺がん発症を増加させるか、また喫煙によりその関連に影響があるかどうかを、夜間交代勤務の状況と詳細な喫煙に関する情報、その他の交絡因子を含めて検討することとした。

方法:
1976年のNurses' Health Studyに登録された30歳から55歳の女性看護師121,701人のうち1988年の質問紙で夜間交代勤務の期間について報告した85,197人の女性を今回の研究対象者とした。このうち調査以前にがんと報告があった人を除外し78,612人を分析した。1988年から2008年の20年間で1455人の肺がんを記録した。データの収集は隔年ごとに行った郵送によるアンケートと死亡診断書、医療記録を用いた。夜間の交代勤務と肺がん発生の関連を検討するために、われわれは詳細な喫煙状況と他の危険因子を調節した多変量コックス比例ハザードモデルを用いた。

結果:
夜間の交代勤務を15年以上継続した人は、夜勤をしなかった女性と比較して、肺がんのリスクが28%増加したことが観察された(多変量相対危険(RR)=1.28、95%信頼区間(CI): 1.07-1.53 ; P trend = 0.03)。この関連は、小細胞がんで最も強く(RR = 1.56、95%CI:0.99- 2.47;P trend = 0.03)、腺癌では観察されなかった(RR = 0.91、95のCI: 0.67-1.24; P trend = 0.40)。さらに、夜間の交代勤務歴15年以上によって増加した肺がん発症は、現在喫煙している者に限られ (RR = 1.61、95%CI: 1.21-2.13; P trend < 0.001)、非喫煙者には見られなかった(P interaction = 0.03)。

結論:
われわれは長期間夜間の交代勤務に従事していた現在喫煙者の女性で、肺がんリスクが高いことを見出した。今回観察された関連において、喫煙による交絡が残存している、あるいは偶然によりこの関連が観察された可能性を排除することはできないが、肺がん発症にサーカディアンリズムの障害がどのような役割を果たしているかをさらに探索するために、詳細な喫煙状況の評価を伴った、さらなる大規模な前向き研究が必要である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■15年以上従事した人のカテゴリーを20年としていた。調査は連続変数で調査しておらず、15年以上のカテゴリーは15-19、20-29、および30年以上が組み合わせられたものとなっていた。現実的に15年以上のカテゴリーで20年とか30年とか長期に夜間交代勤務に従事している人が多いことは考えられず、中央値は15年に近い値となることが考えられる。しかし、この研究では中央値を20年と考えることで、傾向性の検定で差を出しにくく(つまり傾きが小さくなる)したのであろう。

■夜勤の定義はどのようになされているのか。今回は、勤務時間などの詳細は不明だが昼夜を含み月3回以上の夜勤を行う仕事に従事した場合となっていた。

■仮説検証型の研究では、通常interactionについても検討すべきであり、今回の論文においては、喫煙者と非喫煙者で層化して検討するなど適切に解析が実施されていると思われた。



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