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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.3.5

2014年3月5日 担当:秋山有佳

Consumption of artificially and sugar-sweetened beverages and incident type 2 diabetes in the Etude Epidémiologique auprès des femmes de la Mutuelle Générale de l'Education Nationale-European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition cohort
~ がんと栄養に関するヨーロッパの前向きコホート研究であるEtude Epidémiologique auprès des femmes de la Mutuelle Générale de l'Education Nationaleにおける、人工甘味料入りと砂糖入り飲料の摂取と2型糖尿病の発症について ~
出典: The American Journal of Clinical Nutrition(2013;97:517-23)
著者: Guy Fagherazzi, Alice Vilier, Daniela Saes Sartorelli, Martin Lajous, Beverley Balkau, and Franc?oise Clavel-Chapelon
<論文の要約>
背景:
主にアメリカの人において、砂糖入り飲料(SSBs)と2型糖尿病(T2D)の発症リスクとの関連が広く示されてきたが、人工甘味料入り飲料(ASBs)の影響についてはあまり知られていない。そこで、本研究は、自己申告されたSSBs、ASBs、そして100%フルーツジュースの摂取とT2Dのリスクとの関係を評価することを目的とした。

方法:
がんと栄養に関するヨーロッパの前向きコホート研究の一部としてフランスで実施されたEtude Epide´ miologique aupre` s des femmes de la Mutuelle Ge´ ne´ rale de l'Education Nationaleにおいて、14年以上追跡されたデータを解析に用いた。合計で66,118人の女性が1993年から追跡され、追跡期間中に1,369人がT2Dを発症したと診断された。T2Dのリスクのハザード比と95%信頼区間を推定するためにCox回帰モデルを用いた。

結果:
摂取者における甘味飲料の平均摂取量は、SSBsが328mL/wk、ASBsが568mL/wkであった。甘味飲料を飲まない人と比較すると、SSBs、ASBsの摂取がそれぞれ、第1四分位(>359mL/wk、>603mL/wk)の女性は、T2D発症のハザード比(95%信頼区間)が1.34(1.05, 1.71)と2.21(1.56, 3.14)と上昇していた。T2Dのリスクが飲料の摂取量の増加に伴い上昇するという強い傾向は、両方の飲料において摂取量の四分位全体を通して見られた(それぞれP=0.0088、P<0.0001)。感度分析では、甘味飲料の独立した強い有意な影響が存在していたが、その関連性はBMIによって部分的に調節されていた。100%フルーツジュースとの関連は見られなかった。

結論:
SSBsとASBsの摂取は、T2Dのリスクの上昇と関連していた。ASBs以外の調整することができなかった糖尿病と関連するファクターを除外できておらず、また、ASBsの摂取とT2D間の因果関係を証明するために、ランダム化試験が求められる。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■人工甘味料入り飲料はいつ頃から一般的に普及し始めたのかが明記されておらず、人工甘味料入り飲料の摂取以前に砂糖入り飲料を摂取していたとすると、人工甘味料入り飲料の影響のみを検討することが難しかったかもしれない。

■本研究の開始が1990年であり、当時と現在では、時代背景や飲料に含まれている成分等も変化していると考えられることから、結果を現在の状況に応用できないのではないか。

■摂取した飲料に砂糖や人工甘味料が含まれているかを自己申告したとのことだが、自己判断できるのか。対象が教員ということで、SESや学歴は高いと考えられるが、栄養の専門家ではないため、判断は難しいのではないか。

■追跡期間中に2型糖尿病と確定診断が下された人数は1,369人と記載している一方で、診断が下された糖尿病症例は3,496名とも書かれている。おそらく3,496人は調査全体(98,995人)における糖尿病症例の人数であると考えられるが、全体から1,369人に至った経緯を詳しく記載した方がよいのではないか。

■Table 1の結果は、各々の飲料を別々に解析したものであると考えられる。どれかだけを摂取しているとは考えづらく、これらの飲料同士も互いに調整する必要があるのではないか。



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