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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.3.19

2014年3月19日 担当:陳

First trimester fetal growth restriction and cardiovascular risk factors in school age children: population based cohort study
~ 妊娠初期の胎児発育遅延と学齢期の子どもの心血管疾患リスクファクター:集団ベースのコホート研究 ~
出典: BMJ 2014;348:g14 doi: 10.1136/bmj.g14 (Published 23 January 2014)
著者: Vincent W V Jaddoe, Layla L de Jonge,Albert Hofman, Oscar H Franco, Eric A P Steegers, Romy Gaillard
<論文の要約>
目的:
妊娠初期の胎児発育遅延と小児期の心血管疾患アウトカムとの関連があるかどうかを評価すること

デザイン:
集団ベースの前向きコホート研究

セッティング:
オランダのロッテルタム

対象者:
最終月経の初日が信頼でき、規則的月経周期を持った母親1184名の妊娠初期の胎児頭殿長を測定した子ども。

主なアウトカム評価項目:
中央値6歳時( 90% range 5.7-6.8 )における次の項目。BMI、総脂肪と腹部脂肪の分布、血圧、また、コレステロール、トリグリセリド、インスリン及びCペプチドの血中濃度。心血管疾患のリスクファクターのクラスターは次の三つ以上有するものと定義された:高腰部脂肪量、高収縮期または拡張期血圧、低高密度リポ蛋白コレステロールあるいは高トリグリセリド濃度、及び高インスリン濃度。

結果:
一標準偏差スコアによる、より大きく妊娠初期の胎児頭殿長はより低いトータル脂肪量、腰部脂肪量、腰・臀脂肪比、拡張期血圧、トータルコレステロール、低密度リポ蛋白コレステロール、及び小児期の心血管疾患リスクファクターのクラスターのリスクと関連した。妊娠年齢と出生体重で調整した後でも、その関連性の変化はほんのわずかであった。小児期のBMIは妊娠初期胎児の頭殿長と小児期総脂肪量との関連を完全に説明した。妊娠初期の胎児の発育は他の心血管疾患アウトカムと関連しなかった。縦断的成長分析で、心血管疾患リスクファクターのクラスタリングがない学齢期の子どもと比べ、心血管疾患リスクファクターのクラスターがある子どもはより小さい妊娠初期胎児の頭殿長、より低い妊娠中、後期胎児体重と6ヶ月以後より高い体重発育があった。

結論:
妊娠初期の発育障害は、学齢期にある子どもにおいて不利な心血管疾患リスクプロフィールと関連した。胎児期の初期は、その後の心血管健康の重要な時期であるかもしれない。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■質問紙で、母親の喫煙情報について、いつの喫煙情報かが述べられていなかった。本研究の質問紙記録時間は妊娠初期登録時と記載されているので、妊娠初期の喫煙状況と考えられる。

■今回胎児頭殿長の標準偏差スコアを説明変数として使った。標準偏差スコアの計算公式は標準偏差スコア=(胎児頭殿長の観察値-平均値)/SDである。表2で示したものは毎標準偏差スコア変化とアウトカムの変化と95%信頼区間である。マイナスの値が出た結果は標準偏差とアウトカムの間に逆の関連があったことを示していた。

■図3では心血管疾患リスクファクターのクラスタリングに該当ありとない群の妊娠初期から6歳までの身長と体重発育の縦断的な違いを示した。この違いは該当あり群と該当ない群の標準偏差スコアの差と95%信頼区間である。

■調整因子については、本研究で調整した因子は最終月経周期の期間、性別、年齢、母親の年齢、教育レベル、民族、出産歴、妊娠前BMI、拡張期血圧、妊娠中喫煙状況、葉酸サプリメント使用、母乳育児の期間、在胎週数、出生体重、子ども6歳のBMIである。他の不足している因子が存在するかもしれない。たとえば、遺伝因子の影響、父親の生活習慣、子どもの飲食習慣など。



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