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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.5.7

2014年5月7日 担当:杉田

Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet
~ 地中海式食事療法による心血管疾患の一次予防 ~
出典: The New England Journal of Medicine 2013; 368: 14: 1279-1290.
著者: Ramon Estruch, Emilio Ros, Jordi Salas-Salvado, Maria-Isabel Covas, Dolores Corella, Feranando Aros, Enrique Gomez-Gracia, Valentina Ruiz-Gutierrez, Miquel Fiol, Jose Lapetra, Rosa Maria Lamuela-Raventos, Lluis Serra-Majem, Xavier Pinto, Josep Basora, Miguel Angel Munoz, Jose V. Sorli, Jose Alfredo Martinez, Miguel Angel Martinez-Gonzalez.
<論文の要約>
背景:
観察コホート研究や二次予防に関する検討で、地中海式食事療法(以下、MD)のアドヒアランスと心血管疾患リスクとの間には逆の相関が示されている。著者らは心血管イベントの一次予防のための食事パターンをRCTで試みた。

方法:
スペインにおける多施設共同研究で、心血管疾患リスクは高いが登録時に心血管疾患がない参加者を、次に挙げる3つのうちの1つの食事療法に無作為に割り付けて試験を行った。①エクストラバージンオリーブオイル(以下、EVOO)とMD、②ミックスナッツとMD、③対照群(低脂肪食をアドバイス)。参加者は個別と集団の教育セッションを年4回受け、割り付けごとに①EVOO、②ミックスナッツ、③小さな食べ物でないギフトを無料で供給された。主要エンドポイントは、主要心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中または心血管疾患による死亡)の発生率とした。中間解析の結果に基づき、フォローアップ期間の中央値が4.8年となった時点で中止された。

結果:
55-80歳の7447名が登録され、女性は57%であった。2つのMD群は、自己報告の摂取量とバイオマーカー解析に従い、介入に対するアドヒアランスが良好であった。主要なエンドポイントは288人で発生した。多変量調整ハザード比は、対照群(イベント発生109名)に対して、EVOO群(イベント発生96名)で0.70(95% CI、0.54-0.92)、ミックスナッツ群(イベント発生83名)で0.72(95% CI、0.54-0.96)であった。食事療法に関連した有害事象は報告されていない。

結論:
心血管疾患リスクの高い人において、EVOOやミックスナッツと組み合わせたMDは、主要な心血管疾患イベントの発生を減少させた。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■食事療法の提案の際に、介入群には健康に良いと考えられているオリーブオイル等の摂取を推奨しているが、対照群には摂取を制限している。この結果、両群での差は過大評価になると思うが、倫理的にこの方法は良いのだろうか。

■EVOOやナッツのアドヒアランスを評価する際に、客観的な指標としてバイオマーカーも測定している点は、評価でき良い点である。

■中間解析を行った際に、介入群のほうがエンドポイントに良い効果を示している事がわかり、倫理的観点から対照群への不利益を考慮して研究を中止した点も評価できる。

■Fig. 2より、リスクが高い群のほうが有意な差がでている傾向にある。これらのことから、ハイリスク群にMDを行うと、そうでない群に比べてより良い効果が得られるのではないか。

■オリーブオイルを使うと今回のエンドポイントに良い影響が出るメカニズムを考えると、日常的にオリーブオイルの使用が増えるとバターや塩の使用が減る事が影響しているのではないか。例えば、パンを食べる際にバターを使わずにオリーブオイルを使う、炒め物を料理する際にバターを使わずにオリーブオイルを使う、など。塩分の使用も大分抑えられるのでは。

■この論文では、参加者の血圧や体重等の変化の記載がない。きっとこれらを加味して評価すると、オリーブオイルやナッツの摂取による影響のメカニズムが見えてくるのではないか。



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