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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.6.4

2014年6月4日 担当:藤井

Exploration and confirmation of factors associated with uncomplicated pregnancy in nulliparous women: prospective cohort study
~ 初産婦における合併症のない妊娠と関連している探索的・確証的因子:前向きコホート研究 ~
出典: BMJ 2013;347:f6398
著者: Lucy C, Paul T , Jenny Myers , Rennae S , Louise C , Gustaaf A , James J , Lesley M E , Robyn A , Lucilla
<論文の要約>
Objective:
合併症のない妊娠に関連している妊娠15週および20週の要因を確定すること。

Design:
前向きの国際的な複数の研究機関にまたがった観察コホート研究

Setting:
オークランド(ニュージーランド)およびアデレード(オーストラリア)(調査および特定の再生データセット)およびマンチェスター、リーズおよびロンドン(英国)およびコーク(アイルランド共和国)(外部確認データセット)。

Participants:
単胎妊娠の5628人の健康な初産婦。

Main outcome measure:
合併症のない妊娠を、37週以上の妊娠期間で正常血圧の妊娠であること、結果としてSGA(妊娠期間に比べて小さく)ではない生産児で、他に明らかな妊娠合併症がないことと定義した。比較群は妊娠合併症のある女性とし、ステップワイズ法でロジスティック回帰分析を行った。

Results:
5628人の女性のうち、3452(61.3%)人は、合併症のない妊娠であった。合併症のない妊娠の可能性を減少させた要因には、BMIの増加(相対危険0.74、95%信頼区間0.65-0.84)、妊娠第1期の薬物乱用(0.90、0.84-0.97)、平均拡張期血圧(0.92、0.91-0.94(5mmHgの増加))および平均収縮期血圧(0.95、0.94-0.96(5mmHgの増加))が含まれた。有益な要因は、妊娠前の果物の1日3回以上の摂取(1.09,1.01-1.18)、有給雇用(1.02,1.01-1.04(8時間につき))であった。改善することが不可能な有害な要因には、経口避妊薬使用中の高血圧歴、社会経済的指数、妊娠中の高血圧の合併症の家族歴、妊娠中の性器出血および子宮動脈抵抗指数の増加がある。妊娠中の喫煙は最初の2つのデータセットの有害な要因であることが顕著であったが、最終モデルには残らなかった。

Conclusions:
この研究では、有害なアウトカムではなく、合併症のない妊娠を強調するように変更するような、新しい仮説を引き出すアプローチの選択を通して、正常妊娠と関連する要因を同定した。他のコホートによる確認は必要であるが、この研究では個々をターゲットとしたライフスタイルについての介入(母親の体重の標準化、妊娠前の果物摂取の増加、血圧の低下、薬物乱用の中止)が、正常な妊娠となる可能性を増加させるかもしれないことを示唆している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■データセットにおいて、オーストラリアとニュージーランドのデータから、ランダムに2/3を選び、残りの1/3のデータセットを作っている。探索的に変数を選択するのであれば、データ数が多い方が精度は上がるはずであるのに、わざわざ分割する理由が不明である。また、分割の方法については記載されているが、理由についての記載はないことから、明示する必要があると考えられる。

■ヨーロッパ(英国・アイルランド)の女性を3つ目のデータセットとして比較したことは、結果を一般化する上での意味は大きい。

■著者らが主張するように「健康な妊娠期を過ごし出生児に問題がないこと」が最も望まれることであり、そのことに焦点を当て「妊娠合併症を起こしにくい要因」を表した意味は大きい。しかし、これまで多くの報告がある、妊娠に関わる疾患についてのリスク要因と、今回検討したリスク要因には大きな差は認められないように見受けられた。

■食品摂取頻度調査をもとに、果物及び野菜の摂取量が1/10以下の群と社会経済的に恵まれない1/10以下の群を比較した場合、周産期の結果は果物・野菜不足の群の方が悪かったことを示し、以前報告した論文の「妊娠中の果物及び野菜の摂取が子癇前症と早産リスクの減少、出生児体重の増加」を引用して、果物の摂取を推奨している。果物摂取はNa/Kの比率を下げることに影響し、血圧低下に貢献しそうではあるが、その理由については言及していない。果物だけを増やすことの意味を明らかにすべきである。

■Table1において、婚姻状況(独身・非婚・既婚)、妊娠状況(初妊婦・以前の流産・妊娠中絶)、喫煙、飲酒、BMIについて、分類したデータの人数とパーセンテージを示しているが、パーセンテージが曝露に対する割合で示さずに、各グループの中で占める割合を示しており、症例対照研究のような記載方法となっている。





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