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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.7.2

2014年7月2日 担当:野田

Bariatric Surgery versus Intensive Medical Therapy for Diabetes - 3-Year Outcomes
~ 糖尿病に対する肥満手術とインスリン強化療法の比較 3年間のアウトカム ~
出典: N Engl J Med 2014;370:2002-13. DOI: 10.1056/NEJMoa1401329
著者: Philip R. Schauer, M.D., Deepak L. Bhatt, M.D., M.P.H., John P. Kirwan, Ph.D., Kathy Wolski, M.P.H., Stacy A. Brethauer, M.D., Sankar D. Navaneethan, M.D., M.P.H., Ali Aminian, M.D., Claire E. Pothier, M.P.H., Esther S.H. Kim, M.D., M.P.H., Steven E. Nissen, M.D., and Sangeeta R. Kashyap, M.D., for the STAMPEDE Investigators*
<論文の要約>
背景:
追跡期間が1年から2年の短いRCTでは、肥満手術が2型糖尿病の改善と関連していた。本研究の目的は、3年間の追跡により、2型糖尿病に対する肥満手術の持続的な影響について、インスリン強化療法と比較して明らかにすることである。

方法:
コントロール不良で肥満のある2型糖尿病患者150人を、ランダムにインスリン強化療法群と、インスリン強化療法に加えてRoux-en-Y吻合による胃再建術か腹腔鏡下袖状胃切除術を行う群に分け、3年後のアウトカムを評価した。プライマリエンドポイントは、HbA1cが6.0%以下であるかどうか、である。

結果:
ベースラインでの患者の平均年齢は48±8歳であり、68%が女性からなり、平均HbA1c値は9.3±1.5%、平均BMIは36.0±3.5であった。参加者のうち91%が36か月のフォローアップを完了し、インスリン強化療法群では、プライマリエンドポイントの基準を満たしたのが5%であったのに対し、Roux-en-Y再建群で38%(P<0.001)、袖状胃切除術群で24%(P=0.01)であった。インスリンを含む血糖降下薬の使用は、薬物療法群に比べて、手術群で低かった。手術群では、薬物療法群(4.2±8.3%)に比べてRoux-en-Y再建群では24.5±9.1%(P<0.001)、袖状胃切除術群では21.1±8.9%(P<0.001)と体重の減少率が大きかった。QOLの指標は、有意に薬物療法群よりも手術群のほうがよかった。術後遅れての大きな合併症はみられなかった。

結論:
コントロール不良の2型糖尿病の肥満患者では、薬物療法のみ行った群に対して、手術療法を併用した群が、有意にHbA1cが改善した患者の割合より多かった。副次評価小目である、体重、血糖降下療法、QOLに関しても、手術群で良好な結果が得られた。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■適格基準としてBMIが27以上と設定されているが、実際の参加者にBMIが35未満の人が36%おり、軽度な過体重者と考えられる人が含まれている。治療の目的が肥満の解消ではなく、血糖コントロールだとしたら適切な集団であろう。日本で肥満手術は、食事療法、運動療法等では治癒しない難治性の重症肥満者に対して行われており、保険適応はBMIによって決められる。日本で肥満手術を過体重者に行うとしたら、治療効果や医療費負担について、保険適応に認定する際、問題になるだろう。

■副次評価項目として、介入後に使用している血糖降下薬の数を用いているが、何の代替指標か分かりづらい。きっとQOLの改善を表していると考えられる。一方、薬の用量をアウトカムとして用いれば、それは糖尿病の重症度や患者個人の元々の耐糖能に左右されよう。またこの文献の方法は、以前に出版した論文を参照するよう指示しており、薬剤数についての結果の妥当性を判断するには不親切であると考える。

■この研究によれば、肥満手術によりBMIは減少し、血糖コントロールは改善している。血糖コントロールが改善したことのメカニズムとして、手術療法が直接、身体の糖代謝に変化をもたらしたのか、減量が中間因子として働いているのかについて、疑問が残る。サブ解析によると、プライマリエンドポイントを予測する要素がBMIの変化量であった。手術により肥満が改善し、その結果、減量により血糖コントロールが良くなったというメカニズムなのかもしれない。





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