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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.9.17

2014年9月17日 担当:藤井

Maternal dietary patterns and preterm delivery: results from large prospective cohort study
~ 母親の食事パターンと早産:大規模前向きコホート研究結果から ~
出典: BMJ 2014;348:g1446 doi: 10.1136/bmj.g1446 (Published 4 March 2014)
著者: Linda Englund-Ögge, Anne Lise Brantsæter, Verena Sengpiel, Margareta Haugen, Bryndis Eva Birgisdottir, Ronny Myhre, Helle Margrete Meltzer, Bo Jacobsson
<論文の要約>
目的:
母親の食事パターンと早産リスクに関連が存在するかどうかを検討すること。

デザイン:
前向きコホート研究

セッティング:
ノルウェー、2002年から2008年

参加者:
66,000人の妊婦(単胎、食物摂取頻度調査に回答し、出産児数や以前の早産の情報に欠損がなく、妊娠週数が22週0日から41週6日で、糖尿病がなく、研究期間における初回妊娠)

メインアウトカム:
「慎重な:Prudent」例えば、野菜、果物、油、飲料水、全粒シリアル、食物繊維が豊富なパン)、「欧米の:Western」(塩味あるいは甘いスナック、精製したパン、肉加工品)、「伝統的な:Traditional」(いも類、魚)と解釈された3つの異なる食事パターンごとの早産のハザード比

結果:
共変量の調整後、「慎重な」パターンが高スコアであることは、有意に早産の減少と関連しており、早産のハザード比が三分位の高対低で0.88(95%信頼区間0.80-0.97)であった。慎重なパターンはまた、自然早産と後期早産の低リスクと有意に関連していた。早産との独立した関連は、「欧米の」パターンでは見つけられなかった。「伝統的な」パターンは早産の減少と関連しており、三分位の高対低のハザード比は0.91(0.83-0.99)であった。

結論:
この研究では、妊娠中に「慎重な」あるいは「伝統的な」食事パターンを守る女性は、他の女性達に比べて早産のリスクが低いことを見出した。これらの発見は、因果関係を立証することはできないけれども、野菜、果物、全穀粒、魚、飲料水を含むバランスの良い食事をとるよう妊婦に食事の助言をすることを支持している。この結果は、加工食品やファストフード、ジャンクフード、スナックを完全に除くよりも、慎重な食事パターンに関連する食物摂取を増加させることが重要であることを示している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■FFQ(半定量食物摂取頻度調査)の255食品から主成分分析により58の食品群が見出され、そのうちの3つの食事パターンをもとに解析しているが、その累積寄与率は16%と極めて低い。統計学のテキストでは、70%あるいは80%を目標にすることが示されており、累積寄与率の低さが気になるところではある。しかし、これは摂取食品の多様性を示しているともいえる。

■見出された食事パターンの累積寄与率は低いにもかかわらず、有意な結果を導き出せたことは、研究対象数が多かったことも影響している。また、食事パターンと栄養素やエネルギー密度の関連も分析しており、それぞれの食事パターンの栄養的な特徴を確認した上で、ラベルを付けていることは評価できる。特に「慎重な」食事パターンは、いわゆる健全な食事をイメージできる食品で構成されており、妊婦のみならず多くの人に推奨される食品の内容ではあるが、食文化の異なる国において、そのまま使用できるかは不明である。

■食事パターンを抽出する際の基準とした固有値について、結果の冒頭部分に記述しているが、方法に記載すべきではないか。また、身長とエネルギー摂取量についてカットオフ値が示されていたが、何を基準としたのかを示すべきであろう。





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