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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.10.22

2014年10月22日 担当:陳

Incidence of childhood obesity in the United States
~ 米国における小児肥満の罹患率 ~
出典: N Engl J Med 2014;370:403-11.
著者: Solveig A. Cunningham, Michael R. Kramer, K. M. Venkat Narayan
<論文の要約>
背景:
米国で子どもの肥満の有病率の増加は報告されているが、子どもの肥満の罹患率についてはほとんど知られていない。そこで、私たちは学童期の肥満の全国罹患率を報告した。

方法:
1998年から1999年に幼稚園に在籍した児を対象とした小児期の縦断研究において、1998年に米国の幼稚園に在籍した7738人の前向きコホートデータを評価した。1998年から2007年の間、子どもの身長と体重は7回測定された。7738名の参加者のうち、ベースライン時に6807名は肥満ではなく、これらの参加者は50,396人-年を追跡された。疾病管理予防センター(CDC)の基準を用いて、過体重と肥満のカテゴリーを定義した。性別、社会経済状況、人種または民族グループ、出生体重、幼稚園時の体重による肥満の年間罹患率、9年間の累積罹患率と全体の罹患率密度(1人-年当りのケース数)を評価した。

結果:
幼稚園入園時(平均年齢5.6歳)に、12.4%の児は肥満で、14.9%の児は過体重であった。8学年(平均年齢14.1歳)では20.8%の児が肥満、17.0%の児が過体重であった。肥満の年間罹患率は幼稚園時の5.4%から5学年と8学年の間で1.7%に減少した。5歳時に過体重であった児は正常体重の児と比較して1000人-年あたり91.5対17.2と、4倍肥満になった(9年間の累積罹患率は31.8%vs7.9%)。5歳から14歳の間に肥満になった児のうち、半数近くがベースライン時で過体重であり、75%の児はBMIが70パーセンタイル以上であった。

結論:
5歳から14歳の間に発症する肥満は、主に幼稚園入園時に過体重の児で多く、より若い年齢で発生する可能性が示された。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■本研究で、対象者の社会経済状況を5分位にしたが、どのような変数を社会経済状況として扱っているのか記載がない。また両親からの自己報告データを利用しているが、これらのデータの妥当性の評価を記載していない。

■Table2で、社会経済状況の第5分位の人数が第1分位の人数の2倍になっており、対象集団にselection biasが存在する可能性がある。疫学論文、特に一般的な罹患率を記述する論文としては、一般化可能性が最も重要だと思われるのに、この点をLimitationとして記載していないことは不適切だと思われる。

■記述疫学として、小児肥満の罹患率と有病率を記述したのみで、アウトカムと曝露の間の因果関係を検討していない。ベースラインの各変数の影響などを多変量解析などで検討してもよかったのではないだろうか。





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