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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.11.26

2014年11月26日 担当:高橋

Opposite Association Between Diabetes , Dyslipidemia , and Hepatocellular Carcinoma Mortality in the Middle-Aged and Elderly
~ 中高年の肝細胞がん死亡において糖尿病と脂質異常の正反対の関係 ~
出典: Hepatology. 2014 Jun;59(6):2207-15.
著者: Chiang CH, Lee LT, Hung SH, Lin WY, Hung HF, Yang WS, Sung PK,Huang KC.
<論文の要約>
背景:
高齢者における、肝細胞がん(HCC)による死亡の代謝系リスクファクターについての、限定的なデータが存在する。本研究では40才以上(中年および高齢者)における糖尿病や脂質異常と、HCCの死亡率の関連を調査した。

方法:
台湾の全国民の健康診査に基づいた前向きコホート研究であり、B型及びC型肝炎ウイルスの感染がない中年や高齢の人を対象として、1998年1月から2008年12月まで追跡した。

結果:
正当な死亡診断書と国の死亡登録により、50,080人中、HCCによる死亡が確認されたのは235人であった。糖尿病はHCCによる死亡と有意な正の相関があった(ハザード比3.38 95%CI: 2.35-4.86)。しかしながら、高トリグリセリド(TG)血症(HR 0.38, 95%CI:0.26-0.55)と高コレステロール血症(HR 0.50, 95%CI: 0.37-0.67)はHCCによる死亡と負の相関を示した。これらの有意な関連は因果の逆転があるかを調べる時間差分析(lag time analysis)を行っても残存した。メタボリックシンドロームはAmerican heart association/National Heart Lung Blood Institute criteria(AHA/NHLBI)による定義(HR 0.63, 95%CI: 0.43 -0.86)やInternational Diabetes Federation criteria(IDF)の定義(HR 0.62, 95%CI:0.43-0.89)において、HCCによる死亡と負の相関が、特に男性でみられた。

結論:
中年や高齢の人で糖尿病の既往のある人に対して、HCCの精査をすることは、HCCの死亡率を減少させるために価値がある。なぜベースラインの脂質異常が、将来におけるHCCの低い死亡率と関連しているのかということについては、さらなる研究が必要である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■対象からHBV、HCV感染の人を除く意義について、背景で述べられているとわかりやすい。(臨床、しかも専門的なJournalなので省略されているのかもしれない)

■サンプルサイズの計算について述べられているが、それに基づいてどうしたかも述べられていると、さらにいいのではないか。

■追跡情報が曖昧な部分があり、コホート集団の定義がわかりにくい。本当に2008年まで募集したのか?

■比例ハザード性についての記載で、SAS使用者にしか分からない説明があり、読者に不親切な部分があるので、より一般的な記載をすべきである。

■結果の解釈が難しいが、結果そのものは大変興味深い。そのため、考察で、特に脂質異常とHCCによる死亡に関するメカニズムについての説明があるともっとよかった。

■今回の研究では、10年の追跡であるが、20年追跡し、後半10年で死亡した人だけを対象に解析を実施したら、HCCと脂質異常との関連がよりはっきりするかもしれない。





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