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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2014.12.3

2014年12月3日 担当:伊藤・広田

Association between mechanical ventilation and neurodevelopmental disorders in a nationwide cohort of extremely low birth weight infants
~ 超低出生体重児の全国的コホートにおける機械換気と神経発達的障害の関連性 ~
出典: Research in Developmental Disabilities 2014;35:544-1550
著者: Wen-Hui Tsai, Yea-Shwu Hwang, Te-Yu Hung, Shih-Feng Weng, Shio-Jean Lin, Wen-Tsan Chang
<論文の要約>
背景:
早産児への機械換気は生存率を減少させているが、神経発達的能力低下への因子でもある。しかしながら超低出生体重児(<1,000g)についての機械換気継続と様々な発達障害リスクの関連性を調査した研究は少ない。目的はベンチレータ使用と発達障害発生率の関連性の調査である。

方法:
1998年~2001年に生まれた超低出生体重児の機械換気による、脳性麻痺(CP)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、知的障害(ID)そして注意欠陥多動性障害(ADHD)発生率への影響を、台湾全民健康保険調査データベースを使用し、10年の後ろ向きフォローアップ研究を行った。初回入院で脳損傷等の合併症のない超低出生体重児728人を3グループ(ベンチレータ使用:2日以下、3~14日、15日以上)に分け解析を行った。

結果:
15日以上の使用児グループは2日以下使用児グループより高いCPのリスク(調整ハザード比:2.66; 95%信頼区間: 1.50-4.59; p < 0.001)とADHDのリスク(調整ハザード比:1.95; 95%信頼区間: 1.02-3.76; p < 0.05)であった。ASDやIDは3グループで有意な違いがみられなかった。

結論:
機械換気の15日以上の使用が、新生児期の脳損傷が特に認められない場合でさえ超低出生体重児へのCPやADHDのリスクを増加させる。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■Preterm(早産児)を対象とした場合、「出生体重1,000g以下」には、在胎日数が少なく低出生体重になる場合(長く育てられない)、また在胎日数が多いものの低出生体重になる場合(大きく育たない)という2つの背景がある。途上国などでは正確な妊娠日数が不明であるため、正確に計測が可能な出生体重のみで分析せざるを得ない場合がある。可能であれば在胎日数での分析をするべきである。

■発達の弱さのアウトカムに繋がるものとして、生後ステロイド使用、壊死性全腸炎、敗血症を医学的因子としている。調整する因子が少ない一方、除外項目が多いので、サンプルサイズを小さくしてしまっている可能性がある。

■各グループを比較すると2日以下グループ[254名]、3~14日グループ[204名]、15日以上グループ[270名(15~28日は74名、29日以上は196名)]になり、2日以下グループと3~14日グループ、29日以上グループは違うグループではないかと考えられる。しかし合わせて分析する場合、ASD発生率の差が生じる代わりにCPやADHDの発生率の差が小さくなってしまう。

■単純に受診行動3回以上という条件での後ろ向きフォローにおいて、対象疾患を100%追っていると考えて良いのか?たとえば最後の受診以降、軽快した場合も死亡した場合も追跡されているが、結果の解釈が違ってくる。死亡者が多い場合は結果を過大評価している可能性もある。追跡期間10年というのが、ADHDやASDの診断範囲として適正かという問題があるが、そのような過小評価の問題はディスカッションで述べられている。以上から結果の解釈が不明になってしまう。

■あまり追跡期間を長くしすぎると、低年齢での診断と高年齢での診断といった、調査期間に関するバイアスが生じてしまう可能性があり注意が必要である。調査対象期間を短くする事でそれらは調整できうる。





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