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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2014年12月10日 担当:千葉・元木

Cardiovascular Effect of Intensive Lifestyle Intervention in Type 2 Diabetes
~2型糖尿病患者における集中的なライフスタイル介入の心血管系への影響~
出典: The NEW INGLAND JOUNAL of MEDICINE July 11,2013 Vol.369 No.2
著者: The Look AHEAD Research Group
<論文の要約>
背景:
研究期間の短い研究の知見により、体重の減少は2型糖尿病の過体重もしくは肥満の患者に推奨されているが、心血管疾患に対する長期的な影響は不明のままである。われわれは、減量のための集中的なライフスタイルの介入が、患者の心血管系の罹患率と死亡率を減少させるか検討を行った。

方法:
米国の16箇所のセンターで、5145人の過体重もしくは肥満の2型超尿病患者をランダムに、カロリー制限と身体活動増加により減量を推進する集中的なライフスタイル介入群と糖尿病のサポートと教育を受ける対照群に、割り付けした。主要なアウトカムは、13.5年間の最大フォローアップ期間内に心血管系が原因の死亡、非致死的な心筋梗塞、非致死脳卒中、狭心症による入院の全てとした。

結果:
フォローアップ期間の中央値が9.6年となったとき、研究が無益であるという分析であることに基づいて、予定よりも早く中止された。体重の減少は、研究期間を通して介入群のほうが対照群より大きかった(1年間において0.8% vs. 0.7%、研究の終了時において6.0% vs. 3.5%)。集中的なライフスタイルへの介入は、糖化ヘモグロビンの大幅な削減と体力、低密度リポタンパクコレステロール値を除くすべての心血管リスクの初期改善をうみだした。主要なアウトカムは介入群の403名の患者と対照群の418名の患者に発生した(それぞれ100人‐年あたり1.83及び1.92;介入群のハザード比は0.95;95%信頼区間は0.83~1.09;p=0.51)

結論:
体重減少に焦点をあてたライフスタイル介入は、2型糖尿病の成人の過体重または肥満における心血管系イベントの割合を減少させなかった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■「心血管疾患に対する減量の長期的な効果」とあるが、どの程度を長期的とするのか。

■AbstractのBackgroundとIntroductionの内容が異なる。

■maximal exercise testの内容と実施期間が記載されていない。その他、研究対象者のリクルート期間と方法について記載されていない。(appendixにも記載されていない)

■意図的でない体重の減量が交絡になるとしているが、重要な問題か?ほかの因子は関与していないのか。

■介入群と対照群で全く異なるプログラムを行っており、介入効果に依る結果なのか比較をすることができない。また、そのことについての言及もない。

■介入群と対照群それぞれのプログラムの強度と継続期間(特に2年目以降)が記載されていない。

■研究の対象者をBMIレベルとインシュリンの摂取で選択しているが、基準は何か。

■サンプルサイズの根拠は示してあるが、計算式や理想とするサイズの記載があったほうがわかりやすい。

■プロトコルの記載がなく、リクルートの仕方やフォローアップ期間内の脱落者がわからない。よって集団の特性や結果の過小評価について検討ができない。対象者のフローはAppendix参照とするのではなく、本文に載せる必要があるのではないか。

■アウトカムを心血管疾患の複合としたため、有意差がでなかったのではないか。アウトカムを明確にシンプルにしたほうがわかりやすいのではないか。

■患者の心血管疾患既往歴によっても結果が変わるかもしれないが、RCTを行う上で患者の選定をすることはできず、研究の限界である。

■介入群で最初の1年目に体重が大きく減少しているが、それは良い結果なのか。

■アウトカムに対し適切な研究デザインなのか。また、今回の研究で得ようとした結果はメリットがあるのか。


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