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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2015年2月18日 担当:秋山

Dietary protein sources in early adulthood and breast cancer incidence:prospective cohort study
~ 早期成人期における食事たんぱく源と乳がん発症について:前向きコホート研究 ~
出典: BMJ(2014;348:g3437)
著者: Maryam S Farvid, Eunyoung Cho, Wendy Y Chen, A Heather Eliassen, Walter C Willett
<論文の要約>
目的:
早期成人期における食事たんぱく源と乳がんのリスクとの関連を調査すること。

デザイン:
前向きコホート研究

セッティング:
アメリカの医療専門職(Health professionals in the United States)

参加者:
Nurses' Health StudyⅡに参加し、1991年に食事に関する調査票に回答した閉経前の女性88,803人。

主要アウトカム測定:
自己報告による同定と病理報告書によって確認された、浸潤性乳がんの発症例。

結果:
私たちは20年間の追跡で、乳がんの2,830例を記録した。赤身肉の総摂取量が高いことは、すべての女性(対象者全体)の乳がんリスク増加と関連していた(RR相対リスク:1.22、95%CI:1.06-1.40;Ptrend=0.01、5分位中最も摂取量が少なかった群と比べ多かった群において)。しかしながら、鶏肉、魚、卵、豆類、ナッツの摂取量が多いことは、すべての女性における乳がんと関連していなかった。閉経状態によって関連を評価すると、閉経後の女性では鶏肉の摂取が多いことと乳がんリスクが低いこととが関連していたが(0.73、0.58-0.91;Ptrend=0.02)、閉経前の女性では認められなかった(0.93、0.78-1.11;Ptrend=0.60)。異なるたんぱく源に置き換えた効果を推測すると、赤身肉1日1サービングを豆類1日1サービングに変えることは、すべての女性において乳がんリスクが15%下がることと(0.85、0.73-0.98)、閉経前の女性においては19%リスクが下がること(0.81、0.66-0.99)と関連していた。また、赤身肉1日1サービングを鶏肉1日1サービングに変えることは、すべての女性における乳がんリスクが17%下がることと(0.83、0.72-0.96)、閉経後の乳がんリスクが24%下がること(0.76、0.59-0.99)と関連していた。さらに、赤身肉1日1サービングを豆類とナッツ、鶏肉、魚を組み合わせたもの1日1サービングに変えることは、すべての女性における乳がんリスク(0.86、0.78-0.94)および、閉経前の乳がん(0.86、0.76-0.98)が14%下がることと関連していた。

結論:
早期成人期における赤身肉の摂取量が多いことは、乳がんのリスクファクターとなる可能性がある。また、赤身肉を豆類、鶏肉、ナッツ、魚を組み合わせたものと置き換えることは乳がんリスクを下げる可能性がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■曝露要因についての情報を最新のものに更新することは、因果の逆転になることもあるのではないだろうか。例えば、たばこについて、以前は喫煙していたが体調の異変を感じ禁煙した場合、最終的には「吸っていない」になるが長期的な曝露がアウトカムに影響を与える疾患の場合では、因果の逆転が起こる可能性が考えられる。そういった項目に関しては慎重に検討する必要があると考えられた。

■限界で「多数の対象(異なる食物と栄養のグループ、閉経前と閉経後のサブグループ、がんのサブタイプ)を作成したが、typeⅠエラーの可能性は除外できない。しかしながら、赤身肉との関連についての主要な結果は重要な仮説である。」と記述している。この記述の仕方は、限界はあるが本当に検討したかったことを評価するためには必要なことである、と上手に切り返しており、この書き方は今後の参考になる。

■Nurses' Health Studyは大変優れた研究である。また、本論文も詳細に記述されており、このような書き方は今後の参考になる。


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