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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2015.5.13

2015年5月13日 担当:広田

Effect of a Home-Based Exercise Program on Functional Recovery Following:Rehabilitation After Hip Fracture
~ 大腿骨頸部骨折後のリハビリテーション後の機能回復に対する在宅運動療法の効果:無作為化比較試験 ~
出典: Journal of the American Medical Association 2014;311(7):700-708
著者: Nancy K. Latham et al.
<論文の要約>
重要性:
多くの高齢者の場合、大腿骨頸部骨折後、長期的な機能障害が継続する。一般的なリハビリテーション終了後に、最小限の監視のもとに行われる在宅運動療法の有効性については確立されていない。

目的:
大腿骨頸部骨折の一般的なリハビリテーション終了後、最低限の理学療法士による接触を伴う在宅運動療法が、機能改善に有効かどうかを検討すること。

デザイン・設定・参加者:
大腿骨頸部骨折後の一般的なリハビリテーションを終了した機能障害を抱える在宅高齢者232名を対象とし、2008年9月から2012年10月に無作為化比較試験を実施した。

介入:
介入群 (n=120) は、理学療法士から機能訓練(椅子からの立ち上がりや段差昇降など)の指導を受け、各々の自宅において自ら6ヶ月間行った。注意コントロール群 (n=112)は、自宅で、電話による心血管系に関する栄養教育を受けた。

主要アウトカムと評価尺度:
身体機能評価は、ベースライン時、6ヶ月(介入の完了時)および 9ヶ月に、盲検化された評価者により行った。主要アウトカムは、簡易身体能力評価尺度:Short Physical Performance Battery(SPPB;0?12段階、高スコアは高機能を示す)と、急性期ケア後の活動尺度:Activity Measure for Post-Acute Care (AM-PAC;23?85段階、高スコアは高機能を示す) により測定された基本動作と日常活動の、6ヶ月時点での機能変化とした。

結果:
無作為化患者232名のうち、195名が6ヶ月時におけるフォローアップが行われ、主要解析に分析対象となった。介入群 (n=100)の機能的な動作は、コントロール群(n=95)と比較して有意な改善を示した。
(SPPB平均スコア)
・介入群 ベースライン時 6.2 [SD 2.7]、6ヶ月時7.2 [SD 3]
・対照群 ベースライン時 6.0 [SD 2.8]、6ヶ月時6.2 [SD 3]
・群間差 0.8 [95%CI、0.4‐1.2]、P<0.001
(AM-PAC基本動作平均スコア)
・介入群 ベースライン時56.2 [SD 7.3]、6ヶ月時58.1 [SD 7.9]
・対照群 ベースライン時56 [SD 7.1]、6ヶ月時56.6 [SD 8.1]
・群間差 1.3 [95%CI、0.2‐2.4]、P=0.03
(AM-PAC日常活動平均スコア)
・介入群 ベースライン時57.4 [SD13.7]、6ヶ月時61.3 [SD15.7]
・対照群 ベースライン時58.2 [SD15.2]、6ヶ月時58.6 [SD15.3]
・群間差 3.5 [95%CI、0.9‐6.0]、P=0.03
多重代入分析では、SPPBとAM-PAC基本動作の群間差は有意であったが、AM-PAC日常活動の群間差はなかった。有意な群間差は、補完の有無を問わずすべての機能測定において9ヶ月時まで持続した。

結論と妥当性:
大腿骨頸部骨折後の標準的なリハビリテーションを終了した患者の在宅プログラムの導入は、無作為化後6ヵ月時点における身体機能の中等度の改善をもたらした。これらの知見の臨床的重要性は今後判断される必要が残っている。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■アウトカム測定を6ヶ月と9ヵ月後に設定しているが、その根拠が明確となっていない。設定期間の背景として医学的根拠があるのか、また診療報酬の問題があるのか不明である。

■両群ランダム化に関して、研究前のマスキングと研究後のブラインドの実行について明記することは重要なことである。

■介入群には家庭運動プログラム指導、対象群へは栄養指導が実施されているが、文面からは栄養指導はすべての対象者に実施されているようにも解釈できる。詳細は不明であるが、もし、介入群に栄養指導をしていないとすれば、運動プログラム自体の効果を測定することが困難であり、まったく別のアプローチを行った両群を比較する根拠が不明である。

■両群の無作為化割り付けに関しては、階層化の無作為化法を使用しており、両群の背景に大きな差がないことは推測されるが、Table1での対象者情報に統計学的な差異がないことを記載してもいいのではないか。

■Table2で各アウトカムスコアの調整を年齢と性別で行っているが、その根拠に関する記載がない。両群で背景に差がないことから、骨疾患の男女差や年齢差を考慮したのであろうか。

■アウトカム変化を表示する際には、Journalが対象としている読者を考慮してグラフの選択をすることが考えられる。本研究が掲載されているJAMAの読者は臨床家であることが多いことから、視覚的に捉えやすい箱ひげ図(Figure2)のようなグラフになったと考えられる。





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