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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2015.5.20,27

2015年5月20日、27日    担当:伊藤、田村

Effect of Structured Physical Activity on Prevention of Major Mobility Disability in Older Adults: The LIFE Study Randomized Clinical Trial
~ 高齢者の主要な可動性障害の予防に関する構造化した身体活動の影響:LIFE study(無作為化比較試験) ~
出典: JAMA. 2014;311(23):2387-2396
著者: Marco Pahor, Jack M, Walter T, et al.
<論文の要約>
意義:
高齢者においての可動性低下は一般的であり、罹患率、入院、障害そして死亡率の独立したリスク因子である。身体活動が可動性障害の予防を促進できる事を示唆しているが、身体活動が可動性障害を予防、もしくは遅らせているのかを検討した明確な臨床試験は無い。

目的:
「長期の構造化された身体活動プログラムは、健康教育プログラム(サクセスフル・エイジング・プログラムとも呼ばれる)より、主要な可動性障害リスクの減少に効果的である」という仮説を検証すること。

デザイン、セッティングと参加者:
高齢者の為のライフスタイル介入と自立(The Lifestyle Interventions and Independence for Elders:LIFE)研究は、2010年2月から2011年12月の間に登録され、平均2.6年間参加した者を対象とした、多施設における、無作為化試験であった。追跡は2013年に終了した。アウトカム評価者は介入割り付けについて盲検化された。参加者はアメリカ合衆国の都市部、郊外部、地方コミュニティの8つのセンターで集められた。我々は、身体の制限(簡易身体パフォーマンスバッテリー(SPPB)で9点以下だが、400m歩行ができる者と定義)を有する70歳~89歳の"座りがち"なボランティアの男性と女性、1,635人を無作為割り付けした。

介入:
参加者は、週2回のセンターと週3~4回の自宅とで行われる有酸素運動、抵抗運動、柔軟運動を含む構造化された中強度の身体活動プログラム (n=818)、もしくは高齢者に関するトピックのワークショップと上肢の伸張運動から成る健康教育プログラム(n=817)に、無作為割り付けされた。

主要アウトカムと測定:
主要アウトカムは、400m歩行能力の喪失と客観的に定義された、主要な可動性障害である。

結果:
主要な可動性障害は身体活動グループの30.1%(246人)、健康教育グループの35.5%(290人)に発生した(ハザード比[HR]:0.82[95%CI,0.69-0.98]、P = .03)。持続的な可動性障害は身体活動グループの120人(14.7%)、健康教育グループの162人(19.8%)が経験した(HR:0.72[95%CI,0.57-0.91]、P = .006)。重度な有害事象は身体活動グループの404人(49.4%)、健康教育グループの373人(45.7%)で報告された(リスク比:1.08[95%CI,0.98-1.20])。

結論と妥当性:
構造化された中強度の身体活動プログラムは、健康教育プログラムと比較した場合、障害発生の可能性がある高齢者において、主要な可動性障害(2.6年以上にわたる高齢者の可動性障害リスク)を減少させる。これらの発見は、虚弱高齢者での、このようなプログラムにおける可動性に関する有益性を示唆している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■運動時間について、参加者の報告のみではなく客観的な加速度計を用いており、結果の妥当性が担保されている。また、繰り返しデータの解析に適切だとされるマルチレベル解析を行っており、測定バイアスが少なく優れたRCTだと思われる。

■サブ解析も事前に殆どの項目が計画されており、αエラー、作用修飾といった統計学的な点についても検討された良い研究であると思われる。

■自己報告の運動時間の差が介入後に縮小する傾向が見られたが、追跡期間中の2.6年間における生活の質(QOL)は、身体活動量も多く、高かったと予測される。今後、QOLについて評価した論文も出版すると思われるが、客観的な運動時間のような指標と併せて、QOLについても考慮していく必要性を感じた。

■介入の安全性について、身体活動群で入院が多い傾向があったが、介入との関連性が不明であり、結論として虚弱高齢者に対する運動のリスクはないとした。しかし、介入の安全性に関して、集団だけではなく個別のケースごとの詳細な分析が必要である。

■第3相試験として計画された予備研究が事前に行われており、多くの費用と時間がかかっているものの、優れた研究だと考えられる。コストに関しても、1ヶ月間の1人当たりの金額を考えると、虚弱高齢者の運動機能維持としては、決して高いものではなく、今後実際に運用できるかどうかを検討する価値がある介入だと思われた。



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