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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2015.9.2

2015年9月2日、16日    担当:岡安、広田

Peer victimization during adolescence and its impact on depression in early adultshood:prospective cohort study in the United Kingdom
~ 思春期におけるいじめと成人初期のうつに対するその影響:英国における前向きコホート研究 ~
出典: BMJ. 2015;350:h2469
著者: L.Bowes, C.Joindon, D Wolke, G.Lewis
<論文の要約>
目的:
13歳時に友人から受ける虐待いじめと18歳時のうつとの関連について検証する。

デザイン:
縦断的観察研究

セッティング:
英国の住民国民ベースのバースコホート研究であるAvon Longitudinal Study of Parents and Childrenを基にした両親と子どもの縦断研究

参加者:
13歳時に友人からいじめを受けたことがあると報告した6719人

主なアウトカム指標の計測:
参加者が18歳時にクリニックで受ける診察の間にClinical Interview schedule-revisedを用いて国際疾病分類第10版(ICD-10)により定義されるうつを評価。3898人が13歳時の友人からのいじめ及び18歳時のうつ症状の両方のデータを保持していた。

結果:
参加者の683人が13歳時の頻繁ないじめを報告し、そのうち101人(14.8%)人は18歳時にICD-10の診断基準に沿ったうつを示した。;参加者の1446人が13歳時の友人からの数回のいじめを報告し、18歳時に103人(7.1%)人がうつ症状を示した。;そして、1769人が13歳時に友人からのいじめがなかったと報告し、98人(5.5%)人が18歳時にうつ症状を示した。友人からいじめを受けていなかった子どもと比較して、頻回にいじめを受けていた子どもはうつに係るオッズが2倍以上(オッズ比2.96、95%信頼区間2.21から3.97、P<0.001)だった。この関係性は、交絡因子を調整した場合、わずかに減少した(2.32、1.49から3.63、P<0.001)。もし、いじめが考えられる関連因子であるならば、人口寄与危険割合では18歳時のうつの29.2%(95%信頼区間10.9%から43.7%)が友人からのいじめによるものであると説明できるであろう。

解釈:
観察されたデータを用いた場合、因果関係を確認することは困難である。しかしながら、我々の結果は思春期に友人から受けるいじめは成人期のうつ症状の出現と関連がある、とのいう仮説と一致している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■図として示されたフローチャートでは正確な参加者の把握が難しく、さらに詳細な記述が必要である。

■18歳時のうつ症状の有無をアウトカムとしているが、正確なうつの発症時期については不明である(18歳時に発症したのか、それとも18歳より前にすでに発症しているのか)

■8、10歳時のいじめの有無について、2時点を選んだ明確な理由が記述されていない

■missing at randomという前提で多重代入法を用いて補完しているが、完全にmissing at randomではなく、バイアスが生じている可能性がある。



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