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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2015.10.7

2015年10月7日    担当:秋山、黄

Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies
~ 女性と男性における牛乳摂取と死亡と骨折のリスクについて:コホート研究 ~
出典: BMJ 2014;349:g6015 doi: 10.1136/bmj.g6015 (Published 27 October 2014)
著者: Karl Michaëlsson professor, Alicja Wolk professor, Sophie Langenskiöld senior lecturer, Samar Basu professor, Eva Warensjö Lemming researcher, Håkan Melhus professor, Liisa Byberg associate professor
<論文の要約>
目的:
牛乳摂取量が多いことが女性と男性における死亡と骨折と関連するかどうかについて検討すること。

デザイン:
コホート研究

セッティング:
スウェーデン中部における3つの郡。

参加者:
61,433人の女性(1987~90年のベースライン時に39~74歳だった)と、45,339人の男性(1997年のベースライン時に45~79歳だった)の二つの大きなスウェーデンのコホートで、食物摂取頻度調査票が実施された。女性は1997年に2回目の食物摂取頻度調査票に答えた。

主なアウトカム指標の計測:
死亡または骨折に関する牛乳摂取量と時間との関連性を決定するために多変量生存モデルを用いた。

結果:
平均20.1年の追跡期間中、15,541人の女性が死亡し、17,252人が骨折したが、そのうち4,259人は股関節骨折であった。平均11.2年の追跡期間の男性のコホートでは、10,112人の男性が死亡し、1,166の股関節骨折の症例を含む5,066人が骨折した。女性において、1日グラス1杯未満群と比較して1日3杯以上の牛乳を摂取している群の調整済み死亡ハザード比は1.93だった(95%信頼区間:1.80-2.06)。グラス1杯ずつ牛乳を摂取の摂取量が増えたときの、全死亡の調整済みハザード比は、女性1.15(1.13-1.17)、男性1.03(1.01-1.04)だった。女性において牛乳1杯増えるごとに、いかなる骨折でも(1.02、1.00-1.04)、または股関節骨折(1.09、1.05-1.13)でも、牛乳の摂取量が多いことと骨折のリスクがあることが観察された。男性のそれに該当する調整済みハザード比は、1.01(0.99-1.03)と1.03(0.99-1.07)だった。男性と女性の二つの追加のコホートのサブサンプルにおいて、牛乳の摂取量と尿8-iso-PGF2α(酸化ストレスのバイオマーカー)および血清インターロイキン6(主要炎症性バイオマーカー)間に正の相関が見られた。

解釈:
牛乳摂取量が多いことは、女性のコホートと他の男性のコホートにおける高い死亡率と、女性における高い骨折の発生と関連があった。残存する交絡と因果の逆転現象の可能性がそもそも存在する観察研究のデザインでは、結果の慎重な解釈が推奨された。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■Abstractの参加者に、女性は1997年に2回目の食物摂取頻度調査を行ったとの情報があるが、その後、この情報に関連する内容がAbstractには記載されていない。そのためこの情報はAbstractには不要だと考えられる。

■栄養素は、例えば、牛乳を多く摂取している人は肉の摂取量も多い、というような、他の様々な栄養素との関連もあるため、一つの栄養素にフォーカスをあてて分析するのは難しいのではないか。以前読んだような、地中海式の食事…と言うような、食事スタイルと健康アウトカムの関連を検討するほうが、詳細なメカニズムはわからないものの、潜在的な交絡などをコントロールしやすいように思う。

■牛乳とバイオマーカーの因果関係が不明瞭である。男性に関しては、本研究対象者ではない集団でバイオマーカーの検討をしており、本研究対象者に当てはめることの妥当性に疑問を感じる。さらに、インターロイキン6に関しては、男性のみ、しかも本研究の対象ではない集団の血清を用いており、こちらも、ディスカッションでメカニズムの説明をしているが、その理論を支持するには不十分な検討ではないだろうか。

■結果の解釈について、ベースライン時のデータのみで評価しているため、その後の食生活および体重の変化は考慮されていない。体重が増加することで、死亡や骨折のリスクが上がる可能性も考えられる。牛乳摂取が多いと、総摂取カロリーが多いということが示されていたことから、特に閉経後に骨折リスクが高くなる女性において、肥満⇒病気・骨折⇒死亡というメカニズムも考えられ、このことから、結果に性差が表れたことも説明がつくのではないだろうか。



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