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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2015.10.28

2015年10月28日    担当:伊藤、野田

Integrated primary care for patients with mental and physical multimorbidity: cluster randomised controlled trial of collaborative care for patients with depression comorbid with diabetes or cardiovascular disease
~ 心身の複数の慢性合併症のある患者に対する統合したプライマリケア: 糖尿病または冠動脈疾患を併発しているうつ病患者への共同ケアのクラスター無作為化試験 ~
出典: BMJ 2015;350:h638
著者: Peter Coventry, Karina Lovell, Chris Dickens, et al.
<論文の要約>
目的:
うつ病と慢性的な身体疾患を合併した人たちに対する統合された共同ケアモデルの効果を調べる。

デザイン:
クラスター無作為化試験

セッティング:
北西イングランドにおける36の一般診療所

参加者:
糖尿病か冠動脈疾患もしくは両方の記録がある、少なくとも2週間のうつ病症状(PHQ-9で10以上)を有した患者、387人。平均年齢は58.5(11.7SD)歳であった。参加者は糖尿病または冠動脈疾患以外に平均6.2の(3.0SD)の慢性的な症状を有していた。男性は240人(62%)で、360人(90%)が試験を完了した。

介入:
共同ケアは、行動を活性化する患者の嗜好、認識の再構成、定量的曝露そして、もしくはライフスタイルについてのアドバイスと薬物治療管理と再発の防止を含んだ。最高8回の心理的治療セッションは、英国国民健康保険におけるImproving Access to Psychological Therapy servicesによって雇用された、特別な訓練を受けたPWPにより提供された。ケアの統合は診療所の看護師により提供された2回の治療セッションにて強化された。通常のケアは標準的な臨床で実施される内容で、一般診開業医と看護師により提供された。

主なアウトカム指標の計測:
19の一般診療所が共同ケアに、20の一般診療所が通常のケアに無作為に割り付けされた。3ヶ所の一般診療所が患者募集前に試験を辞退した。191人の患者が共同ケアに、196人の患者が通常のケアに割り付けられた。ベースラインうつ病スコアの調整の後、うつ病スコアの平均は共同ケア群で0.23(SCL-D13)点(95%信頼区間-0.41~-0.05)低く、標準化すると効果の大きさは0.30であった。介入群の患者はまた、より良い自己管理であると報告し、より多くの患者がケアで中心的であったと評価し、ケアに満足していた。両群の生活の質、疾患特異的な生活の質、自己効力感、身体障害、社会的支援において、有意な差はなかった。

結果:
平均20.1年の追跡期間中、15,541人の女性が死亡し、17,252人が骨折したが、そのうち4,259人は股関節骨折であった。平均11.2年の追跡期間の男性のコホートでは、10,112人の男性が死亡し、1,166の股関節骨折の症例を含む5,066人が骨折した。女性において、1日グラス1杯未満群と比較して1日3杯以上の牛乳を摂取している群の調整済み死亡ハザード比は1.93だった(95%信頼区間:1.80-2.06)。グラス1杯ずつ牛乳を摂取の摂取量が増えたときの、全死亡の調整済みハザード比は、女性1.15(1.13-1.17)、男性1.03(1.01-1.04)だった。女性において牛乳1杯増えるごとに、いかなる骨折でも(1.02、1.00-1.04)、または股関節骨折(1.09、1.05-1.13)でも、牛乳の摂取量が多いことと骨折のリスクがあることが観察された。男性のそれに該当する調整済みハザード比は、1.01(0.99-1.03)と1.03(0.99-1.07)だった。男性と女性の二つの追加のコホートのサブサンプルにおいて、牛乳の摂取量と尿8-iso-PGF2α(酸化ストレスのバイオマーカー)および血清インターロイキン6(主要炎症性バイオマーカー)間に正の相関が見られた。
結論:
プライマリケアにおける共同ケア(診療所の看護師と協力して提供された短時間の低強度心理療法の統合)はうつ病を減らし、心身の複数の慢性合併症のある人々での慢性疾患の自己管理を改善しうる。介入効果量があまり大きくなく、事前推定された影響より小さかったが、高度な心身の慢性合併症を有する貧困層の集団において、日常的な設定での試験が達成された。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■Abstractに介入期間についての記載がないので、できればどの程度の期間で介入し、それをどの段階で評価したのかを記載したほうが良いと思われた。

■どのように39の一般診療所を選択して登録したのかが説明されていないので、外的妥当性が評価できない。また、割り付けの後に3ヶ所脱落しているので、選択バイアスが介在する可能性がある。 ■今回の対象者のように身体疾患にうつ症状を合併している場合、もともとうつ症状のある人に身体疾患が合併したのか、身体疾患を発症したことによりうつ症状が出てきたのかはよくわからないが、これらの対象者を同時に評価してもいいのだろうか。また、もともと抗うつ薬治療を行っていた人を除外基準に設定していないが、治療効果の異なる集団を含んでいる可能性があり、こちらについても言及すべきではないかと思われた。

■南アジア系の人種に対して、研究に参加する際に、特別な配慮をした理由についての説明がない。貧困の割合が多く治療効果が高い集団が集められた可能性がある。治療効果に影響を与える要因については考察すべきである。

■一方で、maskingやblindなどの、RCTの方法論について詳しく記載がされており、しっかりとした研究である印象を受ける。既存の研究とは異なる集団を対象としており、ハイリスク群への実装可能性を示していて、よい研究である。

■ITT分析は、本来割り付けられた全ての対象者について行うものであり、今回のようにアウトカムの情報がそろっている対象者だけで行うことはあまり一般的ではないと思われる。どうしてこのような解析にしたのか、脱落者について両群に差があるのか、脱落した理由などを考察で説明すべきである。ただし、通常のITTではないが、介入あるいは通常のケアを完全に終了した人をそのままの群で検討しており、Per Protocol Analysisともいえない。結果としては通常のITTとPer Protocol Analysisの中間程度のものと評価できるかもしれない。



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