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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2015.11.18

2015年11月18日    担当:小村、黄

Differences in Risk Factors for Recurrent Versus Incident Preterm Delivery
~ 再発する早産と偶発的な早産とのリスクファクターの違い ~
出典: American Journal of Epidemiology Vol.182,No.2 p157-167
著者: Katherine L. Grantz, Stefanie N. Hinkle, Pauline Mendola, Lindsey A. Sjaarda, Kira Leishear, andPaul S. Albert
<論文の要約>
背景:
早産のリスクファクターは記述されてきたが、過去の早産歴の違いでリスクファクターが異なるかどうかはあまり理解されていない。

方法:
我々は、ユタ州の25,820人の女性(2002-2010)について、初産と2回目の単胎出産の診療記録を用いて、過去に早産したことがある人とない人とで、既知のリスクファクターが異なるかどうかを評価した。37週未満の偶発性の早産と再発性の早産の間でリスクファクターが異なるかどうかを調べるために、早産のリスクファクターと過去の早産の状況間の相乗的な交互作用を用いて、ポアソン回帰で補正された縦断的な推移モデルにより、調整済み相対リスクと95%信頼区間が計算された。

結果:
アルコール摂取や甲状腺疾患、うつを含む、数少ない2回目の妊娠における要因が、再発性の早産と関連していた。喫煙は偶発的な早産のリスクの上昇と関連したが(RR=1.95,95%CI:1.53,2.49)、再発性の早産とは関連がみられなかった(RR=1.09,95%CI:0.71,1.19;Pinteraction=0.02)。一方で、アルコール摂取は再発性の早産のリスクの上昇と関連したが(RR=2.38,95%CI:1.53,3.71)、偶発的な早産とは関連がなかった(RR=0.98,95%CI:0.67,1.43;Pinteraction=<0.01)。

結論:
過去の正期産は、2回目の妊娠において既知の早産のリスクファクターを必ずしも防御しない。過去の早産の状況における多くのリスクファクターは存続しなかった。過去の早産歴は後の早産のリスクファクターを評価するときに重要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■この研究のデザイン(第一子と第二子の出産時の診療記録を比較する方法)は、過去の早産歴の違いによってリスクファクターを明らかにできるものである。

■この研究で使用された解析は、時間的に前の出来事と後の出来事があるような場合において、二つに関係している因子を明らかにする際に有効である。

■甲状腺疾患や子宮異常などの病気の治療の有無とその状態は、早産となるかどうかについて検討する際に重要であると思われるが、その情報が収集できていなかったことは、限界の一つであると思われる。

■喫煙者に比べて飲酒者が少ないが、これは喫煙や飲酒の情報収集が新生児期であったことから、飲酒については過少評価になっている可能性もありそうである。

■Table3にて記載されているP Valueが0.05となっており、0.05未満を有意差があるとする以上、小数点以下まで書いたほうがよい。

■電子カルテを利用しているので、疾患の有無や母体の身長やBMIについての情報はあるが、社会経済的状況についての情報はない。今後の研究での検討課題であろう。



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