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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2015.11.25

2015年11月25日,12月2日    担当:高橋、元木

School based education programme to reduce salt intake in children and their families(School-EduSalt): cluster randomized controlled trial.
~ 子ども達とその家族の塩分摂取量を減らすための学校ベースの教育プログラム:クラスター無作為化比較試験. ~
出典: BMJ 2015;350:h770 doi=10.1136/bmj.h770 Accepted: 09 January 2015
著者: Feng J He, senior research fellow, Yangfeng Wu, professor of epidemiology, Xiang-Xian Feng, professor of epidemiology, Jun Ma, professor, Yuan Ma, PhD student, Haijun Wang, professor, Jing Zhang, research fellow, Jianhui Yuan, professor of nutrition, Ching-Ping Lin, global health fellow, Caryl Nowson, professor of nutrition and ageing, Graham A MacGregor, professor of cardiovascular medicine
<論文の要約>
目的:
小学生を対象とした教育プログラムにより、子ども達とその家族の塩分摂取量を削減させることが出来るかどうかを検討すること。

デザイン:
学校ごとに無作為に介入群と対照群のいずれかに割り付けた、クラスター無作為化比較試験。

セッティング:
中国北部、山西省都市部の28の小学校。

参加者:
小学5年生の子ども279人(平均年齢10.1歳);成人している家族553人(平均年齢43.8歳)。

介入:
介入群の子どもたちは、学校で通常の教育の中で、塩分による有害な影響と、どのようにして塩分摂取量を減らすかという教育を受けた。子ども達はその際に、家族へ減塩についてのメッセージを届けた。介入は1学期の間続けられた(約3.5ヶ月)。

主要アウトカム:
 主要アウトカムは、ベースラインから試験終了までの塩分摂取量の変化(24時間蓄尿検査による尿中ナトリウム排泄量によって測定される)における群間の差とした。副次的アウトカムは、血圧の変化における群間の差であった。

結果:
ベースラインにおいて、子ども達の塩分摂取量の平均値は介入群で7.3(SE0.3)g/日、対照群で6.8(SE0.3)g/日であった。成人している家族では、塩分摂取量はそれぞれ12.6(SE0.4)g/日、11.3(SE0.4)g/日であった。研究期間中、介入群では塩分摂取量の減少があり、対照群では塩分摂取量の増加があった。介入群と対照群の塩分摂取量への効果の平均は、子どもで-1.9g/日(95%信頼区間-2.6~-1.3g/日;p<0.001)、成人において-2.9g/日(95%信頼区間-3.7~-2.2g/日;p<0.001)であった。収縮期血圧への効果の平均は、子どもで-0.8mmHg(-3.0~1.5mmHg;p=0.51)、成人で-2.3mmHg(-4.5~-0.04mmHg;p<0.05)であった。

結論:
通常のカリキュラムの一環として小学校の子ども達に実施された教育プログラムは、子ども自身とその家族の塩分摂取量を減少させるのに有効であった。これは、食事に含まれる塩分のほとんどが消費者により加えられている集団において、塩分消費量を減少させる新規性のある重要なアプローチを提案している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■子どもの年齢によってプログラムへの理解力や家族への伝達力が異なると思われる。対象者に小学5年生を選んだ明確な根拠は何か。また、対象者の家族の選定基準において、両親よりも祖父母を優先させた明確な根拠は何か。

■中国は様々な宗教や民族が暮らしている多民族国家である。様々な民族を考慮したうえで、教育プログラムの効果を測定する必要があるのではないか。また、季節による効果の違いを検討すべきではないだろうか。

■介入方法において、介入群の目標値が塩分摂取量の50%削減であるが、何を基準に設定したものなのか記載がない。

■介入群と対照群への割付の際に年齢や性別で調整したとあるが、調整に使用した統計学的方法をmethodsに記載してほしい。

■参加した家族は無償で参加したのか。謝金等について記載がない。また、本研究は英国の研究者が中心となっているが、中国で本研究を行う際の倫理的配慮について詳しく記載をしてほしい。

■Figure2では介入群の結果のみ記載してある。対照群の食塩の使用量を記載し、両者間の差を示さなかったのは何故か。

■今回の結果は季節性や地域差を考慮した際に、他の地域へ適用させ、一般化することは可能か。



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