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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2016年1月13日,27日    担当:大出、岡安

Body mass index and risk of autoimmune diseases: a study within the Danish National Birth Cohort
~ BMIと自己免疫疾患のリスク:デンマーク出生コホートにおける研究 ~
出典: International journal of epidemiology 2014;43(3): 843-855.
著者: Maria C Harpsoe, Saima Basie, Mikael Andersson, Nete M Nielsen, Morten Frisch, Jan Wohlfahrt, Ellen A Nohr, Allan Linneberg and Tine Jess
<論文の要約>
【背景】
肥満と自己免疫疾患 (AD)の病因的関連が近年、指摘されている。BMIと43種類のADとの関連について検討した。

【方法】
デンマーク出生コホート研究に参加している75,008人の女性を11年間 (中央値)フォローした。ADの診断については、デンマークのレジストリデータから収集。潜在的な交絡因子と考えられる、喫煙、飲酒、出産回数、社会職業的地位で調整したコックス比例ハザードモデルによる分析を行い、ハザード比 (HR)とその95%CIを計算した。

【結果】
研究期間中、2430名 (3.2%)の女性が2607の新規ADを発症した。いずれかの自己免疫性疾患に罹患することについてのリスクは、肥満女性 (BMI ?30 kg/m2)で正常体重(18.5-25 kg/m2)の女性に比べて上昇していたHR = 1.27 (95%CI, 1.11 to 1.46)。肥満女性のサルコイドーシス、I型糖尿病のリスクは、それぞれHR = 3.59 (95%CI, 2.31 to 5.57)、HR = 2.67 (95%CI, 1.71 to 4.17)であった。また、BMIが1 kg/m2上がる毎に、疱疹状皮膚炎のリスクは14% (95%CI, 1 to 30)上昇した。この一方で、BMIが1上がる毎に、セリアック病 (小児脂肪便症)およびレイノー現象のリスクは、それぞれHR = 7% (95%CI, 1 to 13)、HR = 12% (95%CI, 4 to 19)減少を認めた。このほかには、乾癬、関節リウマチ、クローン病とBMIとの関連が示唆された。

【結論】
いくつかのADとBMIとの関連を認めた。特にサルコイドーシス、I型糖尿病の発症と大きいBMIは強く関連していることが分かった。これらの新しい知見は、今後の研究で確認される必要があり、自己免疫反応の進展における、脂肪組織由来の免疫学的変化の可能性について考慮することも必要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■タイトルに"Birth Cohort" とある。これは成人のBMIとAD発症に着目した研究であり、妊娠とAD発症や産まれてくる児のAD発症について検討しているものではない。タイトルが研究内容を適切に表していないのではないか。
    ■妊娠期間259日以下の早産児が除外基準となっている一方、過期産の児が除外対象となっていない。これらの根拠を明確に記述すべきである。
    ■妊娠前の喫煙状況、フォローアップ期間中のアルコール消費量、AD発症への関連が疑われる情報について収集されていないものがあり、交絡因子を十分に考慮できなかったのではないだろうか。
    ■初産婦と経産婦が対象者とされており、妊娠後の体重変化が起こり得ることを考えると、自己申告で収集されたリクルート前の非妊娠期のBMIではなく、第1子妊娠前のBMI、もしくは実際に測定されていると思われる分娩後のBMIを曝露とする解析結果もできれば行って欲しい。経産婦の妊娠前の体重と、初産婦の妊娠前の体重では、その持つ意味が違うことも考慮すべきだろう。
    ■同一のADについて、2度以上の診断された者にアウトカムを限定した感度分析を行っている。 「2回以上の診断」がもつ意味が明記されていない。ADの重症者ということなのか、ADによる入院歴により2度診断されるのか、他の理由なのか、明記して欲しい。その感度分析によるHRへの影響も議論して欲しい。
    ■大きいBMIのADに対するリスクは正のものと負のものとが半々のように映る。すべての結果が偶然の範囲内である可能性がある。


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