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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2016.6.22

2016年6月22日    担当:小村

Assciation Between Rotating Night Shift Work and Risk of Coronary Heart Disease Among Women
~ 女性における、夜勤と冠動脈性心疾患の関連 ~
出典: JAMA 2016;315(16):1726-1734
著者: Céline Vetter, Elizabeth E. Devore, Lani R.Wegrzyn, Jennifer Massa, Frank E. Speizer, Ichiro Kawachi, Bernard Rosner, Meir J. Stampfer, Eva S. Schernhammer,
<論文の要約>
【重要性】
交代制の仕事と冠動脈性心疾患(coronary heart disease, CHD)に関する前向き研究では一貫した結果が得られておらず、追跡期間が短いという限界がある。

【目的】
夜勤がCHDリスクと関係しているかを検討する。

【デザイン、セッティング、対象者】
Nurses' Health Studies(NHS[1988-2012]: N=73,623とNHS2[1989-2013]: N=115,535)に登録されている健康な女性189158人を24年間追跡したコホート研究

【曝露】
ベースライン時にそれまでの夜勤歴(日勤に加えて月に3回以上の夜勤を夜勤とした。NHS2では2~4年おきに情報を更新した。)

【メインアウトカム】
CHDの発症、即ち、非致死性心筋梗塞、CHDによる死、血管造影図によって確認された狭心症、冠動脈バイパス移植術、ステント、血管形成術

【結果】
追跡期間中、NHS(ベースライン時の平均年齢は54.5歳)では7303人がCHDを発症し、NHS2(ベースライン時の平均年齢は34.8歳)では3519人がCHDを発症した。多変量調整を行うCox比例ハザードモデルで解析したところ、両方のコホートにおいて、ベースライン時の夜勤経験年数が大きいことはCHDリスクの上昇と有意に関連していた。NHSにおいては、夜勤の継続とCHDの関係性は追跡期間の後半よりも前半のほうで強く(P interaction=0.02)、これは夜勤をやめるとリスクが小さくなることを示唆している。NHS2における夜勤経験者では、夜勤をやめてから長いこととCHDのリスクが減少することは関連していた。

【結論】
登録された看護師において、夜勤の経験年数が長いことはCHDリスクの微増と統計学的に有意関係していたものの、その絶対量は小さかった。この関連性が、特定の仕事時間や個人の特性に付随しているかを調査するためにさらなる研究が必要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■Table1に関して、年齢調整後の特徴を記した表であると書いてあるが、どのように調整したのかわからない。Methodsのところでどのような調整を行ったのかを記述した方が親切だろう。
    ■肥満と同様に、喫煙に関する説明変数を作用修飾も検討すべきかもしれない。喫煙に関するデータが欠損していた場合に中央値で補完するのはやや大胆な方法のように思う。ばらつきの大きさについてバイアスを生じる。
    ■CHDリスクと夜勤の間には統計的に有意な差があったが、その差の絶対値は小さく、しかも、夜勤勤めの女性は少ないという理由から、今回の結果の公衆衛生的な重要度は低いと結論付けている。しかし、夜勤の定義が「日勤、準夜勤に加えて月に3回以上夜勤に入ること」となっていて、これはやや広い定義である気がする。曝露群にリスクの少ない人が多く含まれることにより、本当に見たい関連性が過小評価されてしまっている可能性がある。頻繁に夜勤に入る看護師のCHDリスクについての検討を行って欲しかった。


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