PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2016.7.27

2016年7月27日    担当:塚原

Race Disparities and Decreasing Birth Weight: Are All Babies Getting Smaller?
~ 人種格差と出生体重の減少について:すべての赤ちゃんは小さくなっているのだろうか? ~
出典: Am J Epidemiol. 2016 Jan 1;183(1):15-23. doi: 10.1093/aje/kwv194. Epub 2015 Dec 13.
著者: Catov JM, Lee M, Roberts JM, Xu J, Simhan HN.
<論文の要約>
【目的】
米国における出生体重の平均値は、過去数十年間にわたって増加したが、現在は減少している可能性がある。胎児の発育における人種格差を考慮して、我々は1997年から2011年までの間にペンシルベニア州ピッツバーグのMagee窶展omens Hospitalにおいて、出生体重における人種特異的な傾向を検討した。

【方法】
37-41週で出生した単胎で出生した児(n=70,607)について、small for gestational age(SGA)とlarge for gestational age(LGA)の割合と、出生体重の平均の経時的な変化を評価した。結果は、母親の人種または民族性により層化した。

【結果】
1997年以降、LGAで出生した乳児は減少した(8.9%-7.7%)のに対し、SGAで出生した乳児の数は増加した(8.7%-9.9%)。出生時における妊娠週数、母親の特性、妊娠の状態を調整後、出生体重は1年あたり2.20g減少した(p<0.0001)。減少は自然産でより顕著であった。白人の女性から出生した児と比較して、アフリカ系アメリカ人女性から出生した児のほうが、有意に減少が大きかった(年間-3.78 g対-1.88 g、P for interaction=0.010 )。四分位点回帰モデルは出生体重が全ての分布にわたって減少していることを示したが、母体要因を考慮すると、アフリカ系アメリカ人の女性から出生した児における減少は、最上位四分位の層に限定されていた。低リスクの女性に限定して解析をすると、出生体重の減少はなくなった。

【結論】
近年出生体重は減少し、それはアフリカ系アメリカ人女性から出生した児で顕著であった。これらの傾向は、アフリカ系アメリカ人女性に偏って存在する高血圧や妊娠中の肥満のようなリスク因子の蓄積によって説明される可能性がある。我々の結果は、人種間で胎児の成長の格差が拡大している可能性を提起している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■特質について経時的変化が人種ごとに記載していない。そのため、人種ごとの経時的な変化による教育年数や経済状況の影響が排除できているのか分からない。
    ■Figure1の出生体重の変化の結果より、出生体重が大きい層で減少量が大きかったが、これは、医療の質の向上によるものではないのかと疑われる。
    ■本研究では、可能な限り妊娠の特性を示す生体指標を用いており、妊娠中の母体の合併症なども考慮されている。しかし、サブグループ解析では人数が少ないものは信頼区間が大きく、解釈が難しくなっている。エコチル調査のような公的データを利用することができれば、大規模な解析を実施できる一方で、詳細なデータを得られないので、調整は難しくなる。他の施設で、同様の研究を検証することで、経年的な変化を検証でき、一般化ができるかもしれない。


前のページに戻る