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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2016.9.7

2016年9月7日    担当:長野

Effect of multidimensional lifestyle intervention on fitness and adiposity in predominantly migrant preschool children (Ballabeina): cluster randomised controlled trial
~ 移民を中心とした就学前の子どもの運動能力と肥満への多面的なライフスタイル介入の効果(Ballabeina):クラスターランダム化比較試験 ~
出典: BMJ 2011Oct 31 ;343:d6195
著者: J J Puder, P Marques-Vidal, C Schindler, L Zahner, I Niederer, F Burgi, V Ebenegger, A Nydegger, S Kriemler.
<論文の要約>
【目的】
移民を中心とした就学前の子どもにおいて多面的なライフスタイル介入による有酸素能力と肥満への効果を検証すること

【デザイン】
1学年間の単盲検クラスターランダム化比較試験(Ballabeina study)である。ランダム化は言語圏による層化の後に実行された。

【セッティング】
スイスにあるドイツ語圏およびフランス語圏の移民人口の高い地域にある幼稚園40クラス

【参加者】
ベースラインの測定時には、727人のうち同意の得られた652人の就学前の子どもがいた(平均年齢5.1±0.7歳、72%は多文化的な血統の移民)。脱落した子どもはいなかったが、26人が転居した。

【介入】
多面的な文化的に適合したライフスタイル介入は身体活動プログラム、栄養やメディア使用(テレビやコンピュータの使用)、睡眠に関する授業、幼稚園の物理的環境への適応を含んだ。介入は2008年8月から2009年6月まで続いた。

【主要アウトカム】
有酸素能力(20メートルシャトルラン)とBMIとした。副次的評価項目は、敏捷性、バランス、体脂肪率、腹囲、身体活動、食習慣、メディアの使用、睡眠、QOL、認知能力とした。

【結果】
対照群と比較して、介入群の子どもたちは介入終了後に有酸素能力が増加した(調整後の平均差0.32ステージ、95%信頼区間:0.07 - 0.57;P=0.01)が、BMIには差がなかった(竏驤€0.07 kg/m2, 竏驤€0.19 - 0.06; P=0.31)。介入群の子どもたちは、敏捷性(竏驤€0.54秒, 竏驤€0.90 - 竏驤€0.17; P=0.004)、体脂肪率(竏驤€1.1%, 竏驤€2.0 - 竏驤€0.2; P=0.02)、および腹囲(竏驤€1.0 cm, 竏驤€1.6 - 竏驤€0.4; P=0.001)において効果的であった。介入群では、自己報告による身体活動、メディアの使用、食習慣においても有益な効果があったが、残りの副次的評価項目ではなかった。

【結論】
多面的なライフスタイル介入は、移民を中心とした就学前の子どもたちで有酸素能力を向上させ、体脂肪率を減少させたが、BMIでは差はなかった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■移民の子どもに肥満や低運動能力が多くそれが問題となっているのであれば、対象に移民の子どもだけをリクルートすべきであった。しかし、移民の子どもだけを対象に研究を実施することは現実的には困難であることから「移民人口の多い地域の子ども」を対象とした。
    ■「BMIでは差はなかったが体脂肪率を減少した」という結果は、脂肪が減少し筋肉が増加したと解釈することができ、メインアウトカムとして「BMI」を設定したことに問題があるかもしれない。一般的な子どもにおいて身体活動の増加による効果を評価するのであればメインアウトカムに「体脂肪率」を設定した方が良いと思う。
    ■副次的評価項目の活動的な子どもの割合は介入群:44.8%→53.1%、対照群:49.0%→43.7%、健康的な食習慣の割合では介入群:26.4%→24.3%、対照群:21.4%→12.4%となった。健康的な子どもの割合が介入群で増加したことよりも、対照群の割合が低下したことが結果に影響したと考えられる。


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