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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.2.22

2017年2月22日    担当:平出

Passive Smoke Exposure as a Risk Factor for Oral Clefts窶尿 Large International Population-Based
Study
~ オーラルクレフト(口唇口蓋裂)のリスク因子としての受動喫煙-大規模かつ国際的な地域住民研究 ~
出典: American Journal of Epidemiology. 2016;183(9):834窶骭€841
著者: Colleen M. Kummet, Lina M. Moreno, Allen J. Wilcox, Paul A. Romitti, Lisa A. DeRoo, Ronald G. Munger, Rolv T. Lie, and George L. Wehby
<論文の要約>
【背景】
妊婦の喫煙は、オーラルクレフト(口唇口蓋裂)の確立された危険因子である。受動喫煙の曝露のエビデンスは明確になっていない。

【方法】
我々は、4,508の症例と9,626のコントロールを得るために、4つの地域住民ベース研究(the Norway Facial Clefts Study, 1996窶骭€2001; the Utah Child and Family Health Study, 1995窶骭€2004;the Norwegian Mother and Child Cohort Study, 1999窶骭€2009; and the National Birth Defects Prevention Study (United States), 1999窶骭€2007)から個人レベルのデータを統合した。妊娠初期の受動と能動喫煙を分類した。多変量ロジスティックモデルにおいて可能な交絡因子(母親のアルコール摂取量、葉酸サプリメントの使用、年齢、体格、教育、雇用と固定効果)を調整した。

【結果】
母親が能動的に喫煙している子供は、オーラルクレフトのリスクが高かった(オッズ比(OR)=1.27, 95%信頼区間(CI):1.11, 1.46)。非喫煙者である母親が受動喫煙の曝露を受けた場合の子どももまた、リスクが上昇した(OR=1.14, 95%CI:1.02, 1.27)受動喫煙に曝露された喫煙者の母親の乳幼児のオーラルクレフトリスクはさらに上昇した(OR=1.51, 95%CI:1.35, 1.70)。

【結論】
大規模なプールデータセットを用いて、集団の違い、研究デザインの違い、オーラルクレフトの種類に拘らず、我々は妊娠初期の受動喫煙とオーラルクレフトとの間に緩やかな関連を見いだした。この関連性は些末な交絡またはバイアスを反映しているのかもしれないが、妊娠中の受動喫煙曝露が催奇形性に繋がる可能性を排除することはできない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■受動喫煙と能動喫煙の両方の曝露を受けている子どものオーラルクレフトのオッズ比が1.51と非常に高い。しかしながら、受動喫煙曝露の評価方法および定義の詳細が不明であり、研究の限界にも記載されているように、受動喫煙の定量化が難しいことが結果の信頼性を低下させていると考えられる。
    ■National Birth Defects Prevention Studyにおいてデータ取得が出産後6週間から24か月と幅があり、自記式質問票による評価のため、思い出しバイアスがかかっている可能性が考えられる。
    ■オーラルクレフトは人種・民族間の差が大きい症例である。ノルウェーの症例数が実際には出生児全体の何%に当たるのか記載した方がより分かりやすいだろう。
    ■喫煙以外のリスク因子について言及しておらず、より詳しい先行研究等の記載が好ましいだろう。


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