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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.5.10

2017年5月10日    担当:小村

Attendance at Religious Services, Prayer, Religious coping, and Religious/Spiritual Identity as
Predictors of All-Cause Mortality in the Black Women’s Health Study
~ Black Women’s Health Studyにおける、全死亡率の予測因子としての礼拝への出席、祈り、病気やストレスに対して宗教的な対処を行うこと、宗教的・霊的なことに信仰があついと自覚していること ~
出典: American Journal of Epidemiology. 2017;185(7):515窶骭€522
著者: Tyler J. VanderWeele, Jeffrey Yu, Yvette C. Cozier, Lauren Wise, M. Austin Argentieri, Lynn Rosenberg, Julie R. Palmer, and Alexandra E. Shields
<論文の要約>
【背景と目的】
過去の縦断的研究では一貫して、礼拝への出席と少ない全死亡との関連が示されているが、他の宗教的・霊的な習慣と死亡との関連に関する文献は限られている。この研究は、宗教的・霊的事項と全死亡率との関連を評価することを目的とした。

【方法】
2005年から2013年12月31日まで、Black Women’s Health Study (BWHS)への参加する3万6613人をフォローし、比例ハザードモデルを用いて宗教的・霊的な習慣と全死亡率の関連を評価した。

【結果】
沢山の人口動態学的指標と健康に関する共変量を調整した後であっても、他の宗教的・霊的な習慣に関する変数と同様に、礼拝への出席は礼拝に行かないことと比較して、かなり低い死亡率比を示した(死亡率比=0.64、95%CI: 0.51-0.80)。人口動態学的指標と健康に関する共変量を調整すると、日に数回祈ることは死亡と関連が見出されなかったが、他の宗教的・霊的な習慣に関する変数で調整すると、死亡率比は高くなった(1日に3回以上 vs 週1回未満で、死亡率比=1.28、95%CI: 0.99-1.67;P-trend<0.01)。病気やストレスに対して宗教的な対処を行うことと非常に信心深いと自覚していることは、年齢のみで調整すると関連があったが、人口動態学的指標と健康に関する共変量を調整すると関連は弱まり、他の宗教的・霊的な習慣に関する変数を追加して調整すると関連はほとんど無くなった。

【解釈】
この結果から、このコホートにおいて礼拝に出席することは最も強い死亡の予測因子であることが示唆された。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■不健康な人ほど礼拝に出席しにくくなるので、頻繁に礼拝に出席できる人というのは、もともと健康な人である可能性が高い。この研究は縦断研究であるものの、ベースライン時における調整が不十分であるため、因果の逆転が起きている可能性がある。
    ■この研究では礼拝へ出席することによる効果が表れるまでの誘導時間を考慮していない。もし、誘導時間が短いと仮定すれば、今回の標本集団の平均年齢が50歳程度であることから、ベースライン時にすでに曝露の影響を受けていることになる。この仮定が正しければ、ベースライン時点で癌、心筋梗塞、脳卒中の既往で調整することは、曝露とアウトカムの関連を弱めている可能性がある。


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