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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.5.17

2017年5月17日    担当:秋山

Chocolate consumption and risk of diabetes mellitus in the Physicians’ Health Study
~ 医師健康調査におけるチョコレート摂取と糖尿病のリスク ~
出典: The American Journal of Clinical Nutrition. 2015; 101: 362-7
著者: Chisa Matsumoto, Andrew B Petrone, Howard D Sesso, J Michael Gaziano, and Luc Djousse
<論文の要約>
【背景】
これまでの研究では、インスリン抵抗性、酸化的ストレス、炎症、といった2型糖尿病(DM)の重要なリスクファクターについて、ココアまたはチョコレートの有益な効果が報告されている。しかしながら、チョコレート摂取がDMのリスクと関連があるか否かは不明確である。

【目的】
医師健康調査(PHS)において、チョコレート摂取がDMの発症と負の関連があるか、という仮説を検証すること。

【デザイン】
ベースライン(1997-2001)時にDMではないPHS参加者18,235人に関するデータを前向きに分析した。チョコレート摂取についてはベースライン時の食物摂取頻度調査から得た。DMの発症は毎年の追跡調査票によって確定し、サブサンプルでのカルテの確認によって妥当性を検証した。DMのハザード比(HRs)と95%信頼区間(95%CIs)を推定するためにCox比例ハザードモデルを用いた。

【結果】
ベースライン時の平均年齢(±SD)は、66.3±9.2歳であった。9.2年の平均追跡期間中、1,123人(6.2%)の男性がDMになった。自己申告されたチョコレート摂取(なし、1-3サービング/月、1サービング/週、2サービング以上/週)に対する、ライフスタイル、臨床、総エネルギー摂取量を含む食事のリスクファクターで調整されたDMの多変量調整済みHRs(95%CIs)は、各々1.00(referent)、0.93(0.79、1.09)、0.86(0.72、1.04)、0.83(0.69、0.99)、(P-trend=0.047)であった。副次解析では、心疾患または心不全の既往歴を除いた対象者で、チョコレート摂取とDMのリスクとの負の関連がわずかに強くみられた(P-trend=0.023)。さらに、年齢とBMIの両方がチョコレートとDMを修飾した(各々、P<0.05)。

【結論】
本データは、チョコレート摂取とDMの発症との負の関連を支持し、そしてこれは、総エネルギー摂取量を含む、総合的なライフスタイルで調整した後の、若い男性と標準体重の男性にのみ当てはまると思われる。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■PHSに関するリクルート数や回収率、追跡率に関する情報が、本論文中には記載されていない。PHSに関するホームページを確認すると分かるが、リクルート数や回収率、追跡率の情報は本論文中にも記載した方がよいと考える。
    ■論文中の限界にも一般化が難しいことは記載されていたが、本研究対象についてPHSのホームページを確認すると、PHSⅠに関しては、261,248人中59,285人が研究へ参加したと記載されており、加えて、男性医師であることから、かなり限定された集団における結果であると思われる。
    ■今回のチョコレート摂取量にはチョコレートを含む菓子類は含まれていないと思われる。日常生活では、チョコレートケーキやチョコレートでコーティングされている菓子・シリアル等はよく摂取されていると考えられ、「純粋なチョコレートを食べる」ということが何らかの意味を持っている可能性が考えられる。よって、チョコレートを含む食品も含んだ総合的なチョコレート摂取量での検討もできるとよいと考える。


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