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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.6.14

2017年6月14日    担当:長野

Association between active commuting and incident cardiovascular disease, cancer, and mortality: prospective cohort study
~ 活動的な通勤と心血管疾患及び癌の発生、死亡率との関連:前向きコホート研究 ~
出典: BMJ 2017; 357: j1456
著者: Carlos A Celis-Morales, Donald M Lyall, Paul Welsh, Jana Anderson, Lewis Steell, Yibing Guo, Reno Maldonado, Daniel F Mackay, Jill P Pell, Naveed Sattar, Jason M R Gill
<論文の要約>
【目的】
活動的な通勤と心血管疾患(CVD)、癌の発生、全死亡率との関連を検討すること。

【デザイン】
前向きコホート研究。

【セッティング】
UK バイオバンク

【参加者】
イギリスの22地域から募集された263,540人(女性:106,674人(52%)、平均年齢52.6歳)。曝露変数は、日常の通勤手段(徒歩、自転車、複合形態、非活動的(車や公共交通機関))。

【主要アウトカム】
CVDと癌の発生、CVD及び癌による死亡、全原因による死亡

【結果】
5年間の追跡結果の結果、2,430人が死亡(496人はCVDに起因、1,126人は癌に起因)した。癌を罹患したのは3,748例で、1,110例がCVDを発生した。最大限に調整したモデルでは、自転車通勤と自転車混合形態では、全ての原因による死亡(自転車:HR=0.59(0.42-0.83)p=0.002、混合:HR=0.76(0.58-1.00)p<0.05)、癌の罹患(自転車:HR=0.55(0.44-0.69)p<0.001、混合:HR=0.64(0.45-0.91)p=0.01)、癌による死亡(自転車:HR=0.60(0.40-0.90)p=0.01、混合:HR=0.68(0.57-0.81)p<0.001)に対するリスクが低かった。自転車および徒歩による通勤は、CVDの発生(自転車:HR=0.54(0.35-0.88)p<0.001、徒歩:HR=0.73(0.54-0.99)p=0)、およびCVDによる死亡(自転車:HR=0.48(0.25-0.92)p=0.03、徒歩:HR=0.64(0.45-0.91)p=0.01)のリスクの低下と関連した。徒歩通勤と全ての原因による死亡、および癌の罹患に統計的に有意な関連は観察されなかった。徒歩を含む混合形態の通勤は、測定された結果のいずれにも顕著な関連はなかった。

【結論】
自転車通勤は、CVD、癌、および全死亡のリスクの低下と関連していた。徒歩通勤は、交絡因子に関係なく、CVDのリスクが低いことと関連していた。活動的な通勤を奨励し、支援するためのイニシアチブは、死亡リスクと重要な慢性疾患の負担を軽減することができる。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■交絡因子について、食事の摂取状況を6項目で調整するなど、過調整をしている可能性がある(よりCVDや癌に関連のある項目を中心に調整したほうが良いだろう)。
    ■ベースラインの結果(Table 1)にもあるように、心肺能力がもともと高く、健康状態が良好な人が自転車(自転車混合形態も含む)で通勤していたと考えられる。心肺機能を成人期で高めておくことがCVDのリスクの低下につながるとも捉えられる。
    ■会社への距離は通勤方法に影響する可能性があり、この違いが結果に影響することは容易に想像できることから、会社への距離を変数に含めた方が良いと考えられる。
    ■徒歩と自転車による通勤については、中央値により2分したShort distanceとLong distanceで非活動的な通勤との比較を行っているが、中央値の記載がないので記載してほしい。
    ■解析時の独立変数の設定方法が不明瞭であり、明確に記載する方が良いだろう。(アウトカムでは通勤方法によって5群に分けて比較をしているが、各群とreference(非活動的通勤者)のみを抽出して比べているのか、ダミー変数を設定して(reference以外の)4群をモデルに組み込んでいるのか文中からは読み取れない。)


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