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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.6.21

2017年6月21日    担当:平出

The Effect of Nonsurgical Periodontal Therapy on Hemoglobin A1c Levels in Persons With Type 2 Diabetes and Chronic Periodontitis
A Randomized Clinical Trial
~2型糖尿病と慢性歯周炎患者におけるヘモグロビンA1cに対する非外科的歯周治療の効果~
~無作為化臨床試験~
出典: JAMA. 2013 Dec 18;310(23):2523-32
著者: Engebretson SP, Hyman LG, Michalowicz BS, Schoenfeld ER, Gelato MC, Hou W, Seaquist ER, Reddy MS, Lewis CE, Oates TW7 Tripathy D, Katancik JA, Orlander PR1 Paquette DW, Hanson NQ, Tsai MY.
<論文の要約>
【重要性】
慢性歯周炎は、歯牙の支持組織の破壊的な炎症性障害であり、糖尿病患者によくみられる。歯周治療が血糖コントロールを改善する可能性があることを示唆するエビデンスは限られている。

【目的】
非外科的歯周治療が中等度から高度の慢性歯周炎を持つ2型糖尿病患者のヘモグロビン(HbA1c)レベルを低下させるかを明らかにする。

【デザイン、セッティング、対象者】
糖尿病と歯周治療試験(DPTT)は、6ヶ月間の単盲検、多施設でのランダム化臨床試験である。対象は、2型糖尿病で、安定した投薬を受けており、HbA1cが7%-9%未満、慢性歯周炎未治療の患者であった。 2009年1月から2012年3月までに、5つの学術医療センターに関連する糖尿病と歯科のクリニックと地域社会から、514人が登録された。

【介入】
処置群(n=257)は、ベースライン時にスケーリング・ルートプレーニングとクロルヘキシジン洗口を受け、3-6カ月ごとにサポーティブペリオドンタルセラピーを受けた。コントロール群(n=257)は6ヶ月間治療を受けなかった。

【主要アウトカムと測定値】
HbA1cのベースラインからの6ヶ月間の変化の差。副次的結果としてプロービングの深さ、クリニカルアタッチメントロス、プロービング時出血、ジンジバルインデックス、空腹時グルコースレベル、ホメオスタシスモデルアセスメント(HOMA2)スコアの変化が含まれた。

【結果】
有用性が認められない為、登録は早期に停止された。6か月時で、対照群の0.11%(SD,1.0)歯周治療群は平均HbA1cレベルが0.17%(SD、1.0)増加したが、施設で調整した線形回帰モデルに基づく比較に有意差は認められなかった(mean difference, "0.05%[95%CI, "0.23%to 0.12%]; P = .55)。6カ月時で、歯周病の臨床的測定値は、調整後の群間比較で、プロービング深さは0.28mm(95%CI、0.18-0.37)であった、アタッチメントロスは0.25mm(95%CI、0.1400.36)、プロービング時出血は13.1%(95%CI, 8.1% to 18.1%、GIは0.27 (95%CI, 0.17 to 0.37)(すべてP<0.001)であり、対照群と比較し改善された。

【結論】
中~高度の慢性歯周炎の2型糖尿病患者において、非外科的歯周治療は血糖コントロールを改善しなかった。これらの知見から、HbA1cレベルの低下を目的とした非外科的歯周治療は支持されない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■慢性歯周炎の評価について、測定者の記載はあるが、診断を行った者の記載がない。診断者が歯科医師とは限らないと推測すると、疾病の診断を歯科医師以外の資格を持つ者が行ってもよいのか、疑問が残る。
    ■独立した監査委員会を設置し、無益性の解析を行うことで研究の早期停止を行っており、中止基準が明確に示されている点が評価できる。
    ■2型糖尿病の発症に炎症が関連しているとの記載があるが、歯周疾患との因果関係に関し詳細な記載がない。糖尿病と歯周疾患との関係に関しては、因果の逆転が考えられるため、先行研究などで分かっているメカニズムについて記載が必要であろう。
    ■施設間の差について、等分散の評価としてF検定を行っているが、その変数がベースライン時の評価結果か研究結果の評価結果か記載がない為、明確にすべきであろう。


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