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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.7.19

2017年7月19日    担当:武内

Effect of Short-Term vs. Long-Term Blood Storage on Mortality after Transfusion
~ 短期間貯蔵と長期間貯蔵血液輸血後の死亡率の違い ~
出典: The New England Journal of Medicine 375号 November 17,2016
著者: N.M.Heddle,R.j.Cook,D.M.Arnold,Y.Liu,R.Barty,M.A.Crowther, P.J.Devereaux,J.Hirsh,T.E.Warkentin,K.E.Webert,D.Roxby, M.Sobieraj-Teague,A.Kurz,D.I.Sessler,P.Figueroa,M.Ellis,and J.W.Eikeboom
<論文の要約>
【背景】
これまでのRCTは、長期間貯蔵した輸血は、患者の有害事象を増加させない、ということを示唆しているが、これらの試験はハイリスク集団に限定されており、死亡率における臨床的に重要な差を検出するにはパワーが足りない。一般的な入院患者において、血液の貯蔵期間が、輸血後の死亡率に影響を与えるかどうかを検討した。

【方法】
本RCTは4ヶ国の6つの病院で行われた。赤血球輸血を必要とする患者を、最も短い期間貯蔵された血液(短期間グループ)、もしくは最も長い期間貯蔵された血液(長期間グループ)に1対2の比率で無作為に割り付けた。パイロットデータより、B型とAB型では、血液貯蔵の平均期間の差が10日以内であり、目標に到達しなかったので、一次解析はA型もしくはO型の患者のみとした。すべての患者は、標準治療を受けたので、書面によるインフォームドコンセントは差し控えた。主要アウトカムは入院中の死亡率であり、研究施設と患者の血液型で調整した後、ロジスティック回帰モデルの方法で評価した。

【結果】
2012年4月から2015年10月に、合計31,497名の患者がランダム化割付された。このうち、登録基準に満たなかった6,761名がランダム割付後に除外された。一次解析にはA型もしくはO型患者20,858名が含まれた。このうち、6,936名は短期間グループに、13,922名は長期間グループに割り付けられた。それぞれの平均の貯蔵期間は、短期間グループは13.0日、長期間グループは23.6日だった。短期間グループでは634名(9.1%)、長期間グループでは1,213名(8.7%)が死亡した(オッズ比1.05、95%信頼区間0.95-1.16、P=0.34)。この解析は24,736名すべての血液型患者を含めた時、死亡率は9.1%と8.8%、それぞれ(オッズ比1.04、95%信頼区間0.95-1.14、P=0.38)と同様の結果だった。事前に指定された3つのハイリスクのサブグループ(心臓血管外科手術下の患者、または集中治療を受けた患者、もしくはがん患者)においても結果は一致した。

【結論】
一般的な入院患者において、新しい血液と標準的な基準に沿った古い血液による輸血の死亡率に有意差はない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■パイロット研究からこの研究の方法を作成している。引用文献があった方がよいのではないか。(例:B型とAB型は、輸血の平均的な貯蔵期間の差が10日以内であったこと、サンプルサイズの計算根拠として)
    ■輸血した入院患者が退院後、他の病院(研究施設外)へ入院し輸血した場合は、解析に含まれているのか記載がなかった。記載して教えてほしい。
    ■研究施設の輸血ストックが少ない場合、選択できる輸血が少ないため、短期間貯蔵グループと長期間貯蔵グループの輸血貯蔵期間が同じになるケースもあるだろう。
    ■日本の基準では、輸血用赤血球貯蔵期間は最大21日間となっている。現状では日本の輸血用血液は不足しており、本研究結果により日本の基準を見直す一助になる可能性がある。


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