PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.9.20

2017年9月20日    担当:太田

Light to moderate intake of alcohol, drinking patterns, and risk of cancer: results from two prospective US cohort studies
~ 軽度からほどほどの量のアルコール摂取、飲酒パターンとがんリスク:米国の2つのコホート研究から ~
出典: BMJ 2015;351:h4238
著者: Yin Cao, postdoctoral research fellow, Walter C Willett, professor, Eric B Rimm, professor, Meir J Stampfer, professor, Edward L Giovannucci, professor
<論文の要約>
【目的】
全てのレベルのアルコール摂取の全癌に対するリスクを、特に軽度から中程度の飲酒と非喫煙者に焦点を当てて、男女別に定量化すること。

【デザイン】
2つの前向きコホートスタディー

【セッティング】
アメリカの医療専門職員

【参加者】
2010年まで追跡された1980年から米国看護師研究に参加した88084人の女性と1986年からのHealth Professionals Follow-up Studyに参加した47881人の男性

【主要アウトカム】
がんの相対危険度

【結果】
3144853人年に渡り、女性19269人と男性7571人(非進行性前立腺癌を除く)のがん発症が記録された。女性では、非飲酒者と比較した軽度から中等度の飲酒者は、アルコール摂取0.1-4.9 g/dayと5-14.9 g/dayで全がんの発症の相対危険度はそれぞれ1.02 (95%信頼区間: 0.98-1.06)と1.04(95%信頼区間: 1.00-1.09; P trend値=0.12)であった。男性の相対危険度、アルコール消費量0.1-4.9 g/day、5-14.9 g/day、15-29.9 g/dayに対してそれぞれ、1.03(95%信頼区間: 0.96-1.11)、1.05(95%信頼区間: 0.97-1.12)、1.06(95%信頼区間: 0.98-1.15; P trend値=0.31)であった。少量からほどほどの量の飲酒者と全がんの関係は喫煙経験者、喫煙非経験者で同様であったが、ほどほどの量を超えた1日30 g/day以上の飲酒者では、喫煙経験者の方が喫煙非経験者よりも強い関係があった。先行研究で確認されている男性の飲酒関連がんについては、喫煙歴のない少量からほどほどの量の飲酒者で発がんのリスクは増えていなかった(P trend=0.18)。しかしながら、女性では、たとえアルコール消費量が5-14.9 g/dayであっても、乳癌によって、アルコール関連がんのリスクは増加していた(相対危険度1.13, 95%信頼区間: 1.06-1.20)。全アルコール摂取量を補正すると、飲酒の頻度が多いことや1回の飲酒量が多い飲み方は、全がんのリスクはそれ以上増加していなかった。

【結論】
少量からほどほどの量の飲酒は全がんのリスク増加に少ないながらも関連している。喫煙歴のない男性は、少量からほどほどの量の飲酒(1日2杯まで)のがんリスクの増加は大きくはない。しかし、喫煙歴のない女性では、アルコール関連がん(主に乳癌)のリスクは、たとえ1日1飲酒の範囲でも増加していた。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■男性の全癌ケースのうち、PSAで見つかった前立腺癌を除外している。これは、PSAでみつかったがんは生涯にわたり生死に影響しないものと扱われているからだと思われる。
    ■最近よく目にする「Patient involvement」が記述されている。この研究が計画された当時はno plan、つまり患者団体は研究に関与しないということが許容されたと考えられる(論文発行が2015年)。 Patient involvementについて;科学研究に、患者を含む一般市民を参加させるという試みは「PPI(public and patient involvement:一般市民や患者の参画)と英語圏では呼ばれており、多くの分野で試行錯誤がなされている。医学誌『BMJ』は2013年、患者参加型査読に患者の見解を取り入れ始め、患者査読者のためのガイドラインを公表した。『BMJ』は「患者査読者」に対しては、専門家の査読者とは異なる疑問に答えることを求めていて、その例として、「この研究はあなたやほかの患者・介護者にとって重要なことですか?」、「患者や介護者にとって、抜けている部分、もしくは強調されるべき部分が何かありませんか?」など5つの疑問を挙げている。(参考:エナゴ学術英語アカデミーHP)


前のページに戻る