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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.12.6

2017年12月6日    担当:大山・須田

Body-Mass Index in 2.3 Million Adolescents and Cardiovascular Death in Adulthood
~ 230万人の若者の肥満指数と成人期の心血管死 ~
出典: N Engl J Med 2016;374:2430-40.
著者: Gilad Twig, M.D., Ph.D., Gal Yaniv, M.D., Ph.D., Hagai Levine, M.D., M.P.H., Adi Leiba, M.D., M.H.A., Nehama Goldberger, M.Sc., Estela Derazne, M.Sc., Dana Ben-Ami Shor, M.D., Dorit Tzur, M.B.A., Arnon Afek, M.D., M.H.A., Ari Shamiss, M.D., M.P.H., Ziona Haklai, M.A., and Jeremy D. Kark, M.D., Ph.D.
<論文の要約>
【背景】
幼少期の肥満の世界的な増加の観点から、思春期のBMIと成人期の心臓血管疾患死の関連を調査した。

【方法】
米国疾病対策センターCDCからの性別及び年齢別BMIパーセンタイルで、230万人のイスラエルの思春期の若者(17歳前後)の1967~2010年までに測定されたBMIのデータをグループ分けした。主要アウトカムは、2011年中期までの冠動脈性疾患、脳卒中、原因不明の突然死もしくは3つの組み合わせによる死亡とした。コックス比例ハザードモデルで解析した。

【結果】
42,297,007人年のfollow-up期間中、32,127人中2,918人(9.1%)が循環器系死亡だった。その内訳は、冠動脈性心疾患1497人、脳卒中528人、そして急死893人だった。多変量解析では、BMIの50~74パーセンタイル群以降の群から、冠動脈性心疾患死及び、全死亡のリスクが段階的に増加した。肥満群(BMIが95パーセンタイル以上)のハザード比は、5~24パーセンタイルを参照群として、冠状動脈性心疾患死亡率4.9(95%信頼区間[CI]、3.906.1)、脳卒中2.6(95%CI、1.704.1)、突然死2.1(95%CI、1.502.9)、全循環器系死亡が3.5(95%CI、2.9~4.1)であった(性別、年齢、生年、社会人口統計の特徴、および身長で調節済み)。同じパーセンタイル群の心血管系死亡のハザード比は、フォローアップ期間中、0010年の間は2.0(95%CI、1.103.9)、30~40年の間は4.1(95%CI、3.105.4)だった。いずれの期間もハザード比は、冠状動脈性心疾患による死亡が一貫して高かった。広範な感度分析でも、結果にほとんど変化はみられなかった。

【結論】
50~74パーセンタイルの正常な範囲の思春期のBMIは、40年のfollow-upの間に冠動脈性心疾患死亡及び全死亡と関連した。過体重と肥満は成人期の冠状動脈性疾患の死亡率上昇と深く関連した。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■BMIの分類について 子どものBMIをそのまま成人の分類に当てはめてよいのか。子どものBMIが成人のどの範囲に相当するかといった先行文献があったはずだろう。またそもそも、BMIを心疾患死亡等の指標としていいのか。
    →本研究では、CDCからの性別及び年齢別BMIパーセンタイルとBMI値での8区分の分類で解析がされている。上記の質問に対する言及は論文中にはなかった。BMIは身長などによって、指標としての意味が若干異なってくるという限界があるものの、BMIは肥満の指標として世界的に広く認知されている。
    ■本研究の目的はBMIの閾値を調べることであり、思春期のBMIは、正常域範囲内であるこの研究参加者のBMIの50パーセンタイル点から全死亡率が上昇していた。しかし、思春期のBMIが独立した危険因子なのか成人期の肥満を媒介するものなのか、または、両方か、は成人期のBMIを調査していないため、本研究では明らかにされなかった。
    ■本研究のアウトカムのうち、冠動脈疾患、脳卒中、突然死を合わせたものを心血管疾患死亡としていた。突然死の定義はICD9またはICD10のコードを確認すると、必ずしも心臓血管疾患死とは限らないため、BMIと心臓血管疾患死の関連調査に突然死を含めて良いものか疑問が持たれた。


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