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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.1.17

2017年1月17日    担当:田中

Risk of post-pregnancy hypertension in woman with a history of hypertensive disorders of pregnancy: nationwide cohort study
~ 妊娠高血圧症候群既往女性の出産後の高血圧のリスク:全国的なコホート研究 ~
出典: BMJ. 2017;358;J3078
著者: Ida Behrens, Saima Basit, Mads Melbye, Jacob A Lykke, Jan Wohlfahrt, Henning Bundgaard, Baskaran Thilaganathan,
   Heather A Boyd
<論文の要約>
【目的】
妊娠高血圧症候群女性の、出産後の高血圧のリスクが出産後いつから増加するか、また時間経過によってリスクが高まるかを明らかにすること

【デザイン】
国への登録に基づいたコホート研究

【セッティング】
デンマーク

【対象者】
1995年から2012年に第1子を出産、あるいは死産した482972名の初産婦(累積的な発生率の分析)と、1978年から2012年に少なくとも1人以上出産、あるいは死産した1025118名の女性(コックス回帰分析)

【主要アウトカム】
投薬治療を必要とする出産後の高血圧の10年間の累積発生率、コックス比例ハザードモデルを用いたハザード比の推計

【結果】
20歳代で初妊娠の妊娠高血圧症候群の女性は、10年後には14%の女性が高血圧症に発展した。一方、初妊娠時に血圧正常者であった女性で高血圧症を発症した女性は4%であった。40歳代の初妊娠の女性も同様であり、それぞれ32%、11%であった。出産した年に妊娠高血圧症候群の女性は正常血圧の女性と比較して、12倍~25倍高血圧症の発症率が高かった。妊娠高血圧症候群の女性は出産後1010年で3倍010倍高血圧症の発症率が高く、20年以上でさえ2倍と高いままであった。

【結論】
妊娠高血圧症候群と出産後の高血圧の関連は、妊娠直後から高く、その後20年以上持続する。妊娠高血圧症候群の女性の1/3は10年以内に高血圧症を発症する可能性があり、心血管系疾患を予防するためにも、このような女性に対しては妊娠直後からの血圧管理を始めるべきである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■出産後の高血圧を「2回以上高血圧治療薬を処方された患者」と定義しているため、投薬治療を行わない患者(経過観察)の存在を考えると、出産後の高血圧の発症率が過小評価されていることも考えられる。
    ■高血圧治療薬を内服する患者は、治療に積極的な患者とも考えられ、出産後の高血圧既往の妊産婦だった可能性が高い。このため、出産後の高血圧の発症率が過大評価されている可能性も考えられる。
    ■妊娠高血圧症候群既往女性のフォローアップとして無作為臨床試験データが必要とあるが、妊娠高血圧症候群の妊産婦に今回の研究結果をもとにした高血圧管理の案内を配布するなど、具体的なアイデアの提案があるとより公衆衛生的に取り組みやすいのではないか。


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