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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.1.31

2018年1月31日    担当:岩淵

Effect of the Goals of Care Intervention for Advanced Dementia: A Randomized Clinical Trial
~ 進行性の認知症患者に対するGoals of Care(GOC)介入の効果:ランダム化比較試験 ~
出典: JAMA Intern Med. 2017 January 01; 177(1): 24-31.
著者: Laura C. Hanson, Sheryl Zimmerman, Mi-Kyung Song, Feng-Chang Lin, Cherie Rosemond, Timothy S. Carey, Susan L. Mitchell
<論文の要約>
【重要性】
進行した認知症において、ケアのゴールの決定は困難であり、医療ケアはしばしば本人の希望よりも過剰である。

【目的】
認知症を持つ介護施設の入所者に対するコミュニケーションと緩和ケアの質を改善するために、ケアのゴール(GOC)決定補助介入プログラムを比較する事。

【研究デザイン、セッティング、参加者】
22の介護施設に入所中の認知症患者302名とその家族を対象とした単盲検クラスターランダム化比較試験。

【介入内容】
GOC意思決定支援のビデオに加えて、介護施設の医療者の組織的な話し合い(対照群は情報提供ビデオと一般的なケア計画)。

【メインアウトカムと評価尺度】
3か月時点での主要なアウトカムは、1)コミュニケーションの質(QOC質問紙:0‐10点、高いほど質が良いコミュニケーション)、2)主なケアのゴールについての医師との一致(「ケアと治療における最良のゴール」と医師の「ケアと治療のための最優先事項」で同じゴールを支持するか)についての家族のレポート、3)治療と希望の一致度(Advance Care Planning Problemスコア)。9か月時点での副次アウトカムは、症状マネジメントとケアの家族による評価、ケアプランの中の緩和ケア項目、Medical Orders for Scope of Treatment (MOST)の完了率、病院搬送率である。入居者と家族の一対を主な分析単位とし、すべての分析は intention-to-treat割り付けによった。

【結果】
入居者の平均年齢は86.5歳。39名(12.9%)がアフリカ系アメリカ人、246名(81.5%)が女性だった。GOC介入群は、家族はより質の良いコミュニケーション(QOCスコア:介入群6.0点 vs. 対照群5.6点、P=0.05)と良い終末期のコミュニケーション(QOC 終末期のサブスケール:介入群3.7点 vs. 対照群3.0点、P=0.02)を報告した。3か月時点で、ゴールの一致率は差がなかった。しかし、介入群の家族は9か月時点または死亡時でのより高い一致率を報告した(介入群133名[88.4%] vs. 対照群108名[71.2%]、P=0.001)。家族が評価した希望と治療の一致、症状管理、ケアの質は差がなかった。介入群の入所者は、治療計画における緩和ケアの内容が多く(介入群5.6点 vs. 対照群4.7点、P=0.02)とMOSTオーダー使用率(介入群35% vs. 対照群16%、P=0.05)があり、病院搬送率は半分(介入群0.078/90人日 vs. 対照群0.163/90人日、RR:0.47 、95%CI:0.26-0.88)であった。9か月時点での生存期間は影響を受けなかった(調整済みHR:0.76、95%CI:0.54-1.08、p=0.13)。

【結論と妥当性】
GOC意思決定補助の介入は、進行した認知症がある介護施設の入居者に対する終末期のコミュニケーションの改善と、病院への搬送を減らしながら緩和ケアプランを向上させることに効果的である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■認知症以外の患者の疾患に関する情報が明記されていない。ランダム化されてはいるものの、疾患の違いによって症状にも違いが生じ、必要な治療、ケアおよびアウトカムに影響していた可能性が考えられることから、記載した方が良いと思われる。
    ■終末期のコミュニケーションの質については触れられている一方、9か月時点で一般的なコミュニケーションの質の評価が介入群で有意に低かったことへの解釈がDiscussionに書かれていない。記載した方が良いと考える。
    ■この論文では亡くなった場合の評価を9か月時点での評価と合わせて解析している。しかし両者の評価の差に関しての記載はない。検討した上で合わせて解析しているのかもしれない。患者さんが生存しているのと亡くなっているのでは状況が異なると考えられることから、個別に検討した結果も記載してあると良いと思った。


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