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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.2.14

2018年2月14日    担当:大出

Primary care-led weight management for remission of type 2 diabetes (DiRECT): an open-label, cluster-randomised trial
~ 2型糖尿病患者の寛解を目的としたプライマリケア医主導の体重管理について(DiRECT):オープンラベルクラスターランダム化比較試験 ~
出典: Lancet. 2017 Dec 4. pii: S0140-6736(17)33102-1.
著者: Lean ME, Leslie WS, Barnes AC, et al.
<論文の要約>
【背景】
2型糖尿病は生涯にわたる治療を必要とする慢性疾患である。本研究では、プライマリケア医主導の体重管理が糖尿病の寛解に寄与するかを検討する。

【方法】
イングランドのタインサイドとスコットランドにおける49施設におけるオープンラベルクラスター試験。コンピューターで生成した乱数表を用いて1:1で無作為に割付を行った。介入群は体重管理プログラム、コントロール群はガイドラインに遵守した従来の診療。タインサイドかスコットランドで層別をしさらに患者数(practice list size [GP]に登録している患者数)が5700名以下か以上かで層別を行った。患者、介護者、データ収集を担当したリサーチアシスタントは割付の結果を把握していたが、統計分析を担当した者は盲検化した。研究対象者は20-65歳で6年以内に糖尿病と診断された患者で、BMIが24-45kg/m2、インスリンを投与していない者とした。介入群の内容は、糖尿病薬、降圧剤を中止し、全食事代替(1日825-853 kcalのフォーミュラダイエットを3~5ヶ月間)、 段階的な食品の再導入(2-8週間)および長期的な体重減少の維持のための構造化サポートであった。プライマリアウトカムは、15kg以上体重減少するかどうか、薬剤療法を止めてから最短で2ヶ月後、研究開始時から1年後に糖尿病から寛解するかどうか(HbA1cが6.5%未満[48 mmol/mol未満])とした。これらの結果は階層的(体重減少度合いごと)に分析された。本試験は、ISRCTNに登録された(番号:03267836)

【結果】
2014年7月25日~2017年8月5日に、49施設(介入施設23、コントロール施設26)から306名をリクルートし、各グループ149名ずつをITT解析した。12ヶ月時点で、介入群で36名(24%)が15kg以上の体重減少を達成し、コントロール群においては0名だった(p<0.0001)。DMの寛解は介入群で68 名(46%)、コントロール群で6名(4%)が達成した(OR 19.7, 95% CI 7.8 49.8; p<0.0001)。糖尿病の寛解について体重減少度合いごとに分析すると、体重増加した76名の中では寛解した者はおらず、体重が5 kg未満減少または維持した89名のうち6名(7%)、体重が5-10 kg減少した56名のうち19名(34%)、体重が10-15 kg減少した28名の参加者のうち16人(57%)、体重減少が15kg以上であった36名の参加者のうち31名(86%)に認めた。平均体重減少値は、介入群で10kg (SD8.0)、コントロール群で1.0 kg (SD3.7)であった (調整済み平均差-8.8 kg, 95% CI  10.3~  7.3; p<0.0001)。QOL値はEuroQoLを用いて測定され、介入群で7.2ポイント(SD21.3)改善、コントロール群で2.9ポイント(SD15.5)後退であった。(調整済み平均差6.4 ポイント, 95% CI 2.5 10.3; p=0.0012)。合計9例の重大な有害事象があり、7例(4%)が介入群、2例(1%)がコントロール群だった。このうち2例の深刻な有害事象(胆石疝痛と腹痛)は、同一患者に起こり、潜在的に介入が関連していると考えられた。有害事象を起因とする試験からの脱落はなかった。

【結語】
12ヶ月の時点で約半数の参加者が糖尿病から寛解し、糖尿病薬が中止できた。2型糖尿病の寛解は、プライマリケアの実用的な目標となりうる。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■プライマリアウトカムを、12ヶ月の時点で15kg以上の体重減少を認めた者としている。理由として、研究で体重を10-15kg減少させると、短期の間血糖が正常化することが確認されているとしている。幅が5kgもあり、15kgとした点については根拠が十分とは言いがたい。
    ■介入の一部として食事療法を採用している。体重を下げるだけならば、炭水化物を一切抜いたAtkins Dietが有名ではある。Atkins Dietのような炭水化物除去食よりも、今回の炭水化物を含んだ食事療法がなぜ選択されたかについての言及はあまりなかった。
    ■研究参加が可能な者のうち、実際に参加したのがきわめて28%と低く、介入群の中でも、食事代替療法を指示通りに終えることができた者は79%に留まった。介入が継続的に実行し続けられるよう、食事療法の期間を参加者の生活スタイルに合わせたり、行動変容がもたらせられるように指導を行ったりとこれまでに体重管理プログラムとは異なる工夫をしていたと述べられているものの、糖尿病患者の行動変容は容易ではないことが伺える。


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