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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.3.7

2018年3月7日    担当:武内

A Trial of Wound Irrigation in the Initial Management of Open Fracture Wounds
~ 開放骨折創の初期管理における創傷洗浄の試験 ~
出典: The New England Journal of Medicine 373;27 December 31.2015
著者: Mohit Bhandari,M.D.,Ph.D.,Kyle.Jeray,M.D.,Brad A. Petrisor,M.D.
<論文の要約>
【背景】
開放骨折の創傷管理は創傷洗浄と混入物を除去する創面切除が行われる際の、さまざまな洗浄圧や洗浄液の有効性が問われている。私たちは、高・低・超低圧の洗浄圧を用いて、オリーブ石鹸または生理食塩水の洗浄による効果を調査した。

【方法】
41のクリニカルセンターで行われた2 by 3の要因デザインの本研究では、四肢の開放骨折患者を3つの洗浄圧(高圧>20psi、低圧5-10psi、超低圧1-2psi)、および洗浄液がオリーブ石鹸もしくは生理食塩水の組み合わせ(6群)のうちのひとつで洗浄するようにランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、初期手術後12か月以内の創傷、骨折治癒の促進、または創傷感染の治療を目的とした再手術とした。

【結果】
合計2551名の患者が無作為に割り付けられ、そのうち2447名が適格と判断され、最終解析に含まれた。高圧グループでは826人中109人(13.2%)、低圧グループは809人中103人(12.7%)、超低圧グループでは812人中111人(13.7%)が再手術となった。3つの一対比較のハザード比は以下のようになった。高圧に対して低圧では0.92(95%CI: 0.70 1.20,P=0.53),超低圧に対して高圧では1.02(95%CI: 0.78 1.33, P=0.89), 超低圧に対して低圧では、0.93(95%CI: 0.71 1.23, P=0.62)。再手術は石鹸グループにおいて患者1229人中182人(14.8%)と生食グループでは1218人中141人(11.6%)であった(ハザード比1.32,95%CI: 1.06 1.66,P=0.01)。

【結論】
再手術の割合は洗浄圧にかかわらず同等だった。開放骨折の洗浄においては、低コストな代替手段である超低圧洗浄が許容できることが示された。再手術の割合は、生食グループより石鹸グループの方が高かった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■今回検討した介入(洗浄液・圧)以外の創傷処置(手術前の洗浄方法など)は本文中では触れていないが、それも結果に影響するのではないか。
    ■石鹸液で洗浄後に生理食塩水で洗浄する、という群があってもよいかもしれない。
    ■創傷の重症度に応じて最低限洗浄する量を定めたのは、現場の状況に即している。


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