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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.5.9

2018年5月9日    担当:大岡

A three-generation study on the association of tobacco smoking with asthma
~ 喫煙と喘息の関連における3世代間研究 ~
出典: International Journal of Epidemiology, 2018, Vol0, No.0, 1-12
著者: Simone Accordini, Lucia Calciano, Ane Johannessen, et al. On behalf of the Ageing Lungs in European Cohorts(ALEC) Study
<論文の要約>
【背景】
妊娠中の喫煙は彼らの子どもの喘息リスクを上昇させる。祖母の喫煙も同様の影響を持つかもしれないといういくつかのエビデンスがあり、思春期における父親の喫煙が、精子前駆細胞における伝達可能なエピゲノム変化を通して、子どもの健康に影響するかもしれないという生物的妥当性が存在する。本研究では、3世代間の喫煙と喘息の関連について評価した

【方法】
2010年から2013年に実施された、European Community Respiratory Health Survey(ECRHS)Ⅲにおける臨床面接で、26施設の2233人の母親と1964人の父親が、彼らの子ども(51歳以下)に喘息の既往があるか、またそれにアレルギー性鼻炎を併発していたかどうかを報告した。それらの母親と父親は、彼らの両親(祖父母)と自分の喘息の有無、教育水準、喫煙歴についての情報も提供した。多施設、3世代の枠におけるマルチレベル媒介モデルを母系(子ども4666人)と父系(4192人)にそれぞれ適応した。

【結果】
15歳未満での父親の喫煙 [相対リスク比(RRR)1.43、95%CI:1.01-2.01] と妊娠中の喫煙 [RRR 1.27、95%CI:1.01-1.59] が子どもにおけるアレルギー性鼻炎なしの喘息と関連していた。祖母の妊娠中の喫煙が彼女らの娘の喘息に関連しており [オッズ比(OR)1.55、95%CI:1.17-2.06]、母系における彼女らの孫のアレルギー性鼻炎併発の喘息と関連していた [RRR1.25、95%CI:1.02-1.55]。

【結論】
早期の思春期における父親の喫煙、そして祖母と母親の妊娠中の喫煙は、独立して子どもの喘息リスクを上昇させる可能性がある。このように、喘息のリスク要因は双方の親、そして受胎前から検索すべきである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■祖父母が喫煙をしている場合、父母は(思春期や妊娠期も含め)受動喫煙をしている可能性がある。父母が受けた受動喫煙の影響は少なからず彼らの子どもまで影響していると考えられ、その部分についての考察があるとよいと思った。
    ■本研究のアウトカムである喘息は、父母からの報告によりその存在を規定していると論文からは読み取れるが、この喘息の定義は本論文中に明記した方がよい(可能であれば医師の診断の有無を含めるとよい)と考えられる。特に祖父母や子どもの喘息の状況は、父母からの報告であるため、バイアスが含まれている可能性がある。
    ■マルチレベル媒介モデルを使用した分析は、多施設、3世代間の複雑な関係をうまく調整しており、今後疫学研究の分野で用いられることが多くなるだろう。本研究はその使用法について学ぶことが出来、大変勉強になる論文であった。


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