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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.5.23

2018年5月23日    担当:春山

Cohort study on living arrangements of older men and women and risk for basic activities of daily living disability: findings from the AGES project
~ 高齢者の世帯構造と基本的生活動作の障害リスクに関するコホート調査:AGESプロジェクトからの知見 ~
出典: BMC Geriatrics (2017) 17:183
著者: Tami Saito, Chiyoe Murata, Jun Aida and Katsunori Kondo
<論文の要約>
【背景】
高齢者世帯構造は独居者と配偶者のいない世帯の増加により世界的に変化しており、社会保障制度にも影響する可能性がある。しかし、世帯構造と要介護状態の発生との関連は不明なままである。我々は高齢者の世帯構造と要介護発生の関連について、特に性差と配偶者のいない人の同居人の状況に焦点をあてて検討した。

【方法】
愛知老年学的評価プロジェクトの要介護状態ではない65歳以上の6600人の男性、6868人の女性を対象とした。要介護の発生は9.4年間追跡された。要介護の発生は介護保険制度により評価された。階層化したCox比例ハザードモデルにより、配偶者と同居している人に対する独居者および配偶者以外と同居している人の要介護発生リスクを検討した。

【結果】
配偶者以外と同居している男性と独居男性では、健康関連の共変量を調整した後でも有意に要介護発生リスクが上昇していた (ハザード比それぞれ1.38、1.45) 。一方女性では、独居の場合のみ有意に要介護発生リスクが上昇していた(ハザード比1.19)。交互作用モデルでは、配偶者以外と同居する人の要介護リスクは男性で強かったが、有意差はみられなかった(p=0.08)。その後の階層別解析では、ソーシャルサポートを受ける、又は与えることが、独居男性で24.4%、配偶者以外と住む男性で15.8%の要介護発生の超過リスクを説明した。サポートを受けることよりサポートを誰かに提供することの方が、より超過リスクを説明した。

【結論】
配偶者がいない高齢男性は同居人がいたとしても要介護となりやすい。保健医療従事者は、要介護リスクのある高齢者が、ソーシャルサポートをしあえる機会、特にソーシャルサポートを誰かに提供する機会を多くするプログラムを考える必要がある。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■アウトカムの設定を要介護レベル2としているが、その根拠となる文献が挙げられていない。ただ要介護2未満だと介護保険のケアは利用せずに周囲のサポートを受けて生活できている場合もあり、本研究のアウトカムの設定、研究結果ともにリーズナブルだと思われる。
    ■主観的認知機能障害(Subjective cognitive complaints: SCC)は1項目で評価しているが、なぜこの1項目にしたかが不明である。文献も引用されていない。
    ■独居者の婚姻状況が示されていない。この年代で未婚者は少ないかもしれないが、今後増えていくと考えられるので、婚姻状況を考慮した解析が今後重要である。


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