PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.10.31

2018年10月31日    担当:太田

Sarcopenic obesity associated with highsensitivity C-reactive protein in age and sex comparison: a two-center study in South Korea
~ 年齢と性別の違いによる高感度CRPとサルコペニア肥満との関連の比較:韓国での二施設研究 ~
出典: BMJ Open 2018;8:e021232. doi:10.1136/bmjopen-2017-021232
著者: Chul-Hyun Park, Jong Geol Do, Yong-Taek Lee, Kyung Jae Yoon
<論文の要約>
【目的】
高感度C反応蛋白(hs-CRP)とサルコペニア肥満との関係を評価する。hs-CRPとサルコペニア肥満との関係における、年齢や性別による違いを明らかにする。

【デザイン】
観察研究(横断研究)

【対象】
韓国の健康増進センター2カ所で体組成とhs-CRPを計測した237838人。対象者は体組成により、正常、肥満のみ、サルコペニアのみ、サルコペニア肥満の四群にわけられた。

【主要評価項目】
hs-CRPの程度と高いhs-CRP(≥1.0mg/L)を持つ参加者の割合。サルコペニア肥満はサルコペニアの要件(若年成人の骨格筋インデックス平均から-2SD未満)と肥満の要件(ウエストが男性90cm以上、女性85cm以上)を両方みたすものと定義された。

【結果】
hs-CRPの程度はサルコペニア肥満の群でいちばん高かった。年齢、性、併存疾患、代謝、健康関連習慣、人口統計学的要因といったさまざまな交絡因子を補正したのちに 高hs-CRPである参加者の相対危険率(95%信頼区間)は、肥満、サルコペニア、サルコペニア肥満の群でそれぞれ正常群と比較し、1.17 (1.05 to 1.31)、 2.23 (1.21 to 4.07) 、3.23 (2.71 to 3.83)であった。年齢によるサブグループ解析では、多変量ロジスティック回帰解析において高hs-CRPとサルコペニア肥満との関係は、若い人(60歳未満)で高齢者(60歳以上)よりも強くなることを明らかにした(p <0.001)。性別に関しては、男性よりも女性において強く関連していた(p <0.001)。

【結論】
韓国において、高hs-CRPはサルコペニア肥満との独立した関連因子であることを本研究で示唆した。我々は初めて、hs-CRPの上昇とサルコペニア肥満との関連が、女性と60歳未満の若年で強く見られることを明らかにした。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■サルコペニアの診断基準について、日本で一般的な診断基準(Asia Working Group for Sarcopenia)では高齢期に歩行速度や握力の低下があることがサルコペニアの診断前提になっており、世界的には7つの診断基準が混在している状況である。体組成でサルコペニアを規定している本研究の結果は日本での診断基準に沿わず、更にウエストの計測についても日本のメタボリックシンドロームの計測は臍の高さで計られており、本研究の基準とは異なるため、日本等の諸外国の臨床には直ちに応用できないだろう。
    ■観察研究のため限界はあるが、サルコペニアの炎症が身体の何処で起きているのか(筋なのか何処かの臓器なのか)、女性と若年者で関係性が強まるのは何故かといった生理学的生化学的背景の記載が先行文献からは十分に示せていないが、本研究の結果をもとに更なる生理的な機序解明の研究につながる可能性はある。
    ■本研究結果が有意義なものと認められるためには、サルコペニア肥満をhs-CRPでスクリーニングする意義や、本研究の結果を利活用できる状況について、具体例と共に明示する必要があるだろう。
    ■hs-CRPが1の時を境とした二値データによって検討が行われているが、カットオフ値によっては二値で有意な結果が出ない事もあるため、連続値を目的変数にとっても有意な結果が出る事を示しているのは好ましい。


前のページに戻る