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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.11.7

2018年11月7日    担当:長野

Effectiveness of a childhood obesity prevention programme delivered through schools, targeting 6 and 7 year olds: cluster randomised controlled trial (WAVES study)
~ 6-7歳の子どもを対象とした小児肥満予防プログラムの効果:クラスターランダム化比較試験(WAVES study) ~
出典: BMJ 2018;360:k211
著者: Peymane Adab, Miranda J Pallan, Emma R Lancashire, Karla Hemming, Emma Frew, Tim Barrett, Raj Bhopal, Janet E Cade, Alastair Canaway, Joanne L Clarke, Amanda Daley, Jonathan J Deeks, Joan L Duda, Ulf Ekelund, Paramjit Gill, Tania Griffin, Eleanor McGee, Kiya Hurley, James Martin, Jayne Parry, Sandra Passmore, K K Cheng
<論文の要約>
【目的】
小児期の肥満を予防するために、通常の教育と比較した学校と家庭ベースの健康的なライフスタイルプログラム(WAVES 介入)の有効性を評価すること

【デザイン】
クラスターランダム化比較試験

【セッティング】
英国のWest Midlandsの小学校

【参加者】
研究センターの35マイル以内の州営小学校(n=980)の中から無作為に200の学校が選ばれ、少数民族の人口が多い人たちをオーバーサンプリングした。これらの学校は無作為に選択され、順次参加に招待された。4校の募集目標を達成するために適格な144校にアプローチした。ベースライン測定後、固定された平衡化アルゴリズムを用いて、1467人の5歳および6歳の児童(対照:28校、778人の児童)を無作為化した。53校で実施され、最初の追跡調査(15ヶ月)と2回目の追跡調査(30ヶ月)、それぞれで、1287人(87.7%)および1169人(79.7%)の児童のデータが利用可能であった。

【介入】
12ヶ月間の介入は、健康的な食事と身体活動、毎日30分の授業時間の身体活動の機会、アストン・ヴィラ・サッカークラブとの6週間の対話的なスキル・ベースのプログラム、6ヶ月ごとの郵送による地域でできる家族で運動する機会の案内、そして、学期ごとに学校では、健康的な料理スキルに関する家族主催のワークショップを開催した。

【主要アウトカム】
15ヶ月と30ヶ月における体格指数(BMI)のzスコアの差

【結果】
主要アウトカム分析のデータは、ベースライン54校:1392人の児童(対照群:732人);最初のフォローアップ(ベースラインの15ヶ月後)53校:1249人の児童(対照群:675人);2回目のフォローアップ(ベースライン後30ヶ月)53校:1145人の児童(対照群:621人)であった。平均BMI zスコアは、ベースライン調整モデルにおいて、15ヶ月時点の対照群と比較して、介入群で有意に低くなかった(平均差-0.075(95%信頼区間: -0.183-0.033、P=0.18)。30ヶ月後の平均差は-0.027(95%信頼区間: -0.137-0.083、P=0.63)であった。他の身体測定、食事、身体活動、または心理的測定(有害の評価を含む)に関して、群間に統計的に有意な差はなかった。

【結論】
経験に焦点を当てた介入が、BMI zスコアまたは小児肥満の予防に統計的に有意な影響を及ぼさなかったことを示唆している。学校は、複数のセクターや環境にわたる幅広い支持なしに、このような介入を組み込むことによる、小児肥満の流行への影響はなさそうである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■これまでの小児を対象とした肥満予防介入研究のレビューに基づき、肥満改善効果がありそうな介入方法を本研究では採用したが、その介入方法に効果はなかった。このようにネガティブデータもきちんと報告することの意義は大きいと思われる。
    ■主要アウトカムと副次アウトカムで有意確率が異なっている(それぞれ0.05、0.01)。副次アウトカムが複数あり、多重比較になる可能性の指摘を査読者から受けることが想定されるため、副次アウトカムについてあらかじめより厳しく評価したのだと考えられた。
    ■介入が実装された度合いを評価している。介入のプログラム全体としては半数以上の学校が75%以上忠実に介入を実行しているが、身体活動についてはプログラムの実行の度合いは小さい。身体活動に関する介入がもう少し多く実行されていれば、この介入に肥満予防効果が示された可能性がある。


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