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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.11.28

2018年11月28日    担当:浦中

Marriage and risk of dementia: systematic review and meta-analysis of observational studies.
~ 結婚と認知症のリスク:観察研究のシステマティックレビューとメタ分析 ~
出典: Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry2018;89:231 238. doi:10.1136/jnnp-2017-316274
著者: Andrew Sommerlad, Joshua Rueggaer, Archana Singh-Manoux, Glyn Lexis, Gill Livingston
<論文の要約>
【背景】
既婚であることは、健康な生活習慣行動や低死亡率と関連しており、ライフコースの要因による認知症のリスクを低減させる可能性がある。本研究では、婚姻状態と認知症発症のリスクとの間の関連について調査した研究のシステマティックレビューとメタ分析を行った。

【方法】
医療データベースを検索し、年齢および性別を調整した婚姻状態と認知症との関係を報告している研究分野の専門家に問い合わせた。方法論的な質を評価し、既婚者と比較した未亡人、離婚者もしくは生涯独身者の相対リスクを集約するために、ランダム効果メタ分析を実施した。メタ回帰による副次的な層別分析では、臨床的および社会的な状況や研究方法論が結果に及ぼす影響を調査した。

【結果】
812,047人の参加者を対象とした15の研究を包含した。既婚者に比べ、生涯独身者(相対リスク= 1.42(95%CI 1.0701.90))、また未亡人(1.20(95%CI 1.0201.41))の人々は、認知症のリスクが上昇していた。既婚者と離婚者との関連は見られなかった。さらに分析したところ、未亡人において教育をあまり受けていないことが認知症リスクに部分的に交絡しており、生涯独身者においては身体的健康の悪化が認知症リスクの上昇に交絡することが明らかになった。認知症の診断の確認に臨床記録を使った研究に比べ、全ての参加者を臨床的に診察した研究おいて、未婚の状態で認知症のリスクがより高くなることが分かった。

【結論】
既婚者であることは、未亡人と生涯独身者に比べて、認知症のリスクが低下する。また未亡人や生涯独身者はルーチンの日常診療で過小に診断されている。未婚者の認知症予防では、教育と身体の健康に重点を置くべきであり、変更可能なリスクファクターとしては社会参加の可能性を考慮すべきである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究はコホート研究と横断研究の結果を統合している。その解釈について言及されていると良かった。RCTのメタアナリシスはエビデンスレベルが一番高いと言われるが、本研究はコホート研究や観察研究に関するメタアナリシスであることを考慮し結果を解釈する必要がある。
    ■年齢と性別で調整された研究結果を統合し、婚姻状態によるすべての認知症発症リスクが算出されている。性別で層化した分析結果が示されるとより真の効果を見ることができるのではないかと考える。
    ■本研究は既婚者、未亡人または離婚者の期間に関する十分な詳細情報を用いたコホート研究を行うべきであると提言している。婚姻状態の期間に加え、認知症発症に関連する要因として、食事、喫煙、生活行動などの生活習慣や居住環境なども考えられる。また、生活習慣は婚姻状態や居住環境等の影響も受けると考えられることから、これらの要因を考慮した調査・分析も必要と考える。


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