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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.12.5

2018年12月5日    担当:山崎

Association of BMI with overall and cause-specific mortality: a population-based cohort study of 3.6 million adults in the UK
~ BMIと全死亡率・原因別死亡率との関連:UKにおける360万人の成人を対象とした地域住民に基づくコホート研究 ~
出典: Lancet Diabetes Endocrinol 2018 October 30
著者: Krishnan Bhaskaran, Isabel dos-Santos-Silva, David A Leon, Ian J Douglas, Liam Smeeth
<論文の要約>
【背景】
BMIは、全死亡率に強く関連することが知られている。しかし、BMIと広範囲の原因別死亡率との関連を確実に調べるために十分な規模を持つ研究はほとんどない。

【方法】
地域住民を対象としたコホート研究において、国の死亡登録データとリンクしているClinical Practice Research Datalink (CPRD) からのUKのプライマリケアデータを使用し、全死亡率とBMI、広範囲の原因別死亡率(ICD10によって記録された)との関連を調べるために、調整済みCox回帰分析モデルを適合させた。16歳かそれ以上の年齢で収集されたBMIデータを持っており、利用可能な連続追跡時間を持つ全ての個人を組み入れた。追跡は、CPRD研究の標準的フォローアップ開始時、最初のBMI記録から5年目、1998年1月1日(死亡登録開始日)のいずれかのうち一番直近の日から開始し、死亡時、または2016年3月8日で終了した。モデルは、性別によって層化され、ベースライン時の年齢、喫煙、飲酒、糖尿病、重複剥奪指標、暦年で調整した。モデルは非喫煙者だけと、全ての集団の両方に適合させた。また、広範囲の感度分析を実施した。BMIカテゴリー毎に、ベースライン時で40歳であった男女の平均余命は、BMI、年齢、性別を含むポアソンモデルから推定した。

【結果】
研究集団には3,632,674人が含まれた。以下は、1,969,648人の生存者と188,057人の死亡者から成る非喫煙者の分析からの結果である。BMIは、全死亡率とJ字型の関連を持っていた。BMI5kg/m2増加毎のハザード比は、25 kg/m2以下のBMIでは、0.81(95%CI 0.80-0.82)、25 kg/m2以上のBMIでは1.21(1.20-1.22)であった。BMIは、輸送関連事故以外の全ての死因と関連があったが、その関連の形は様々であった。がん、心血管疾患、呼吸器疾患を含む多くの死因は、BMIが21~25 kg/m2の範囲で最も低いリスクになるJ字型の関連を持っていた。精神と行動、神経学的、事故(輸送関連以外)の死因は、BMIが24~27 kg/m2に至るまで負の関連を持っており、それ以上のBMIでは関連がほとんどみられなかった。自傷や対人暴力による死亡は、負の線形関連が観察された。BMIと死亡率との関連は、高齢よりも若い年齢の方が強かった。低い死亡率と関連するBMIは、若年者よりも高齢者で高かった。40歳での平均余命は、健康的な体重(BMI18.5-24.9 kg/m2)の人々と比べて、肥満(BMI≧30.0 kg/m2)男性では4.2年短く、肥満女性では3.5年短く、低体重(BMI≦18.5 kg/m2)男性では4.3年短く、低体重女性では4.5年短かった。分析に喫煙者を含めると、低いBMIの人々において少し強い関連が見られたが、多くの死因で同じような結果になった。これは、喫煙による非常に小さい残差交絡を示唆する。

【解釈】
BMIは、全死亡率と、多くの原因別死亡率とJ字型の関連があった、精神と行動、神経学的、外的原因では、低いBMIは死亡率増加との関連があった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究で使用されたUK Clinical Practice Research Datalink (CPRD)のデータは、プライマリケア無作為抽出のデータである。UK住民の9%をカバーしている。偶然誤差が生じている可能性はないだろうか。
    ■肥満の尺度がBMIのみで、筋肉量や腹部脂肪のデータが無かったため、皮下脂肪・内臓脂肪の多い人が本当には検討されていない。近年、腹囲やサルコペニア肥満といった概念が重要視されている。特に、高齢者の適正体重を適切に評価できていないかもしれない。
    ■がん等の疾患を抱えていることで低体重になるといった逆転を最小限にするために、フォローアップ期間の最初の5年間を除外している。したがって、BMIと死亡率の本当の関連を示すことができていると考えられ、この研究デザインを用いることができるデータであったのは本研究の大きな強みだろう。


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